半導体用語集

中性子照射ドーピング

英語表記:NTD:Neutron Transmutation Doping

NTD法は、ノンドープFZまたはMCZシリコン結晶を原子炉内で熱中性子照射することにより、面内およびインゴット内で均一にP(リン)をドーピングされた高抵抗n型結晶を製造する技術である。シリコン結晶中には、安定的な28Siが92.21%存在している以外に、均一に同位元素30Siが3.09%含まれている。この30Siが原子炉内で熱中性子を照射することにより31Siを核反応生成し、2.6時間の半減期を経て31P(リン)に核変換し、Pが均一にドーパントされる。目的の抵抗率の結晶をえるためには、照射前の導電型、抵抗率、原子炉内の熱中性子束を計測し、照射時間を制御することになる。結晶を均一に照射するため、結晶への照射線量を均一にするため、結晶を回転および上下方向に移動あるいは放射線フィルタの厚さを変えている。中性子照射された結晶は照射ダメージを受け、結晶格子が乱れて結晶の導電性が損なわれ、きわめて高抵抗になっており、熱処理によってダメージの回復、つまり真値に抵抗率回復させることが必要である。原子炉内での中性子は、ドーパント変換に有用な熱中性子以外に高速中性子が存在している。中性子の照射ダメージは、熱中性子の(n,r)反応のr線のrecoil energyによるものと、高速中性子によるものがあるが、抵抗率には高速中性子ダメージがきわめて強く影響を与える。照射原子炉はCd比(熱中性子/高速中性子)が大きい重水炉と小さい軽水炉に分けられる。重水炉照射は、900℃以下の短時間の熱処理で抵抗率が狙い値に回復するが、軽水炉照射は、
1,000℃以上の長時間熱処理が必要である。NTD結晶の品質は、回復熱処理を適切に行えば、照射原子炉による差異はないといえる。このNTD結晶は、抵抗率ストリエーションが発生するドープFZあるいはCZ法では製造することができないきわめて均一な
(<5%)高抵抗率(>10Ω・cm)n型結晶を必要とするダイオード、パワートランジスタ、サイリスタなどの高耐圧系のディスクリートデバイスに用いられる。


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