半導体用語集

二重拡散

英語表記:double diffusion

 半導体素子を作成するためには,しばしばキャリア濃度や伝導型の異なる複数層を形成する必要がある。一方,半導体中のキャリア濃度は,導入した不純物濃度によって次のようにして決まる。すなわち,半導体中にドナー不純物のみが濃度Nᴅで含まれている時は,半導体中の多数キャリアは電子であり,電子濃度nはn~Nᴅとなる。これとは逆にアクセプタ不純物のみが濃度Nᴀで含まれている時は,半導体中の多数キャリアは正孔であり,正孔濃度pはp~Nᴀとなる。半導体中にドナー不純物とアクセプタ不純物が両方とも含まれている場合は,ドナーから放出された電子がエネルギーの低いアクセプタ準位へ移動し,ドナー・アクセプタともイオン化するがキャリアを生成しない現象(補償現象)が生じる。したがって,ドナー不純物とアクセプタ不純物が,濃度Nᴅ,Nᴀで両方とも含まれている場合は,この補償現象により,Nᴅ>Nᴀの場合には半導体はn型となり電子濃度はn~Nᴅ-Nᴀとなる。また逆に,Nᴅ<Nᴀの場合には半導体はp型となり正孔濃度はp~NᴀーNᴅとなる。
 上記の現象を利用し,半導体の同じ表面から異なる深さでドナー不純物やアクセプタ不純物を導入する二重拡散法でキャリア濃度や伝導形の異なる複数層を形成することができる。一例として二重拡散によるnpn接合の形成法を示す。ドナー濃度Nᴅsのn型半導体表面からアクセプタ不純物を表面濃度NᴀᴏがNᴅsを上回るように導入すればn型半導体の表面領域はp型に反転し,pn接合はNᴀ=Nᴅsを満たす位置に形成される。続いて同じ半導体表面からドナー不純物を表面濃度NᴅᴏがNᴀᴏ-Nᴅsを上回るように浅く導入すればp型半導体層の表面側をn型に再度反転し,npn接合が形成される。具体的な応用例としてnpnバイポーラトランジスタを取り上げる。これを高速化するためには,エミッタおよびべースを浅く形成し,さらにべース幅を狭く形成する必要がある。直列抵抗を減少させるための高濃度埋め込み層を持つn型エピタキシャル層に,p型べースを浅く形成し,続いて,狭いべース幅を制御性よく形成するためにn型エミッタが二重拡散法で形成される。不純物を熱拡散で導入する場合は,拡散係数の違いの利用や拡散時間の調節により,各層の厚さが調節される。また制御性よく不純物を導入する場合はイオン注入法が多用される。


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