半導体用語集

光電子広がり

英語表記:photoelectron scattering, range

X線照射により励起されたレジストの構成原子から放出される光電子やオージェ電子がレジスト中で広がる (散乱する)こと。広がりのレンジ (距離)を指すこともある。放出される光電子のエネルギーEphは、照射X線のエネルギーをhv、レジスト構成原子の結合エネルギーをEbとした時、
   Eph=hv-Ebで与えられる。レジストの主な構成原子は、水素、炭素、酸素などであり、これらは電子軌道によって小さいエネルギーから大きいエネルギーまでの複数の結合エネルギーを持つ。したがって、光電子のエネルギーEphは, 照射X線のエネルギーに近い値から、小さい値まで広いエネルキー分布を持つ。照射X線のエネルギーが大きいほど光電子の最大工ネルギーも大きくなる。一方、オージェ電子は炭素や酸素原子から放出され,そのエネルギーは励起された原子に対して一定の値をもつ。K殻の空の場所に電子が落ち込む時に生じるエネルギーが同じ原子内で吸収され、L殻の電子が放出されることをKLLのオージェ電子放出といい、エネルギーEaは、
   Ea=Ek-E11-E12
となり、KLL殻のエネルギー準位 (Ek-E11-E12)で決められる。炭素と酸素原子から放出されるオージェ電子のエネルギーは、それぞれ270と 507eVである。これらの二次電子がレジスト中で工ネルギーを放出することにより露光反応が進む。反応の結果として潜像が形成されるため、二次電子の広がりは解像度の決定要因となる。光電子の広がりを見積る場合、従来からグルーンレンジもしくはべーテのレンジに代表される近似式が使用されてきた。たとえば、2keVの二次電子が密度1.2g/cm3のレジスト中で広がる場合のべーテレンジとグルーンレンジの計算値は、それぞれ0.2μmと0.12μmである。べーテレンジは二次電子のレジスト中での最大広がりに近い値であり、グルーンレンジはそれよりやや小さい値を見積る。しかし、これらは実際の露光における二次電子の広がりの影響にくらべ過剰に見積られていることが実験により証明された。露光量の小さい実際の露光における二次電子の広がりのレンジはグルーンレンジの1/2以下にとどまり、解像度は従来見積りよりも高くなる。


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