半導体用語集

光電導効果

英語表記:photo-conductive effect

 半導体や絶縁体に光を照射した時,そのエネルギーを電子に与えて自由キャリア(電子,正孔)を励起することによって電気電導度が増加する現象,効果をいう。光電効果の一種であり,内部光電効果に分類される。自由キャリア励起の過程は,価電子帯の電子が伝導帯に励起され,自由電子と正孔が生成される過程(光の基礎吸収という)と,価電子帯の電子が不純物準位に励起され正孔が生成される過程,および不純物準位の電子が伝導帯に励起されて,自由電子が生成される過程(これらを光の不純物吸収という)がある。
 半導体の電気伝導度σは,
σ=enμ
と表わされる。ここで,eは単位電荷,nはキャリア密度,μは移動度である。光の照射によりフォトン数(単位時間当たりのフォトン数は,光の電力に比例)に比例した数のキャリアが作られ,キャリア密度が増加する結果電導度が増す。したがって電導度の増加分は入射光の電力に比例する。
 光電導効果を利用した素子は,光電導体(フォトコンダクタ)と呼ばれ,光の検出素子として知られている。素子の基本構造は,半導体に二つのオーム性電極とその間の受光部とで構成される。二つの電極の間に電圧を印加しておき,受光部に光を照射すると光電導効果により電気伝導度が増加し電流が増加する。この電流増加分は電導度の増加分に比例するから,これを電気的に検出することにより,入射した光の電力(単位時間当たりの入射フォトン数)を知ることができる。さらに光電導体では,キャリアが電極間を走行する時間に対するキャリアの寿命時間比で決められる電流増幅効果が期待される。一般に応答速度はキャリアの寿命時間で決まるため,増幅効果と応答速度はトレードオフの関係にある。 
 光電導素子は構造が簡単であるため,古くから使われているが,特に不純物吸収を利用した赤外領域での光検出器として広く用いられている。光電導素子材料として,光の波長帯に応じていくつかの半導体が知られている。CdS,CdSeなどはバンドギャップエネルギーが可視光領域にあり,これを用いた光電導素子は古くから用いられている。PbS,Si,Geなどは近赤外領域にバンドギャップエネルギーがあり,その領域での光電導素子として知られている。また,Si,Geなどに不純物を添加した場合には,光の不純物吸収を利用した赤外領域の光電導効果が期待でき,実際に赤外領域の光検出素子として利用されている。
 フォトトランジスタはnpnまたはpnp構造を基本とするが光電導素子の一種と考えられる。エミッタ領域に光を照射しその伝導度を増すとエミッタに電流を注入した効果になり,電流増幅作用がえられる。
 最近,光電導効果を用いて電気パルスをえる,オーストンスイッチが研究されている。これは伝導度のできるだけ小さい半導体に二つの電極を設け,その電極間に電圧をかけておく。この電極間に光パルスを入射し電気伝導度を上げると電極間は短絡状態になり,電気パルスが発生する。立ち上がり時間は光パルスの立ち上がり時間で決まり,ピコ秒以下にすることができるため,高速光現象を観測するストリークカメラの掃引電圧発生に用いられている。また,周波数領域でみると,発生する電気パルスはTHz領域の周波数成分を持つため,この周波数領域の電磁波発生に利用しようという研究が進められている。


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