半導体用語集

初期酸化膜形成機構

英語表記:initial oxidation mechanism

 通常のシリコン酸化膜はシリコンと酸素の熱化学反応によって作られる。シリコンは酸化が進むと表面にシリコン酸化膜が形成されてくるわけであるから、シリコン表面に酸化が進んでいく時の初期酸化と十分にシリコン酸化膜が表面に形成された後の酸化膜形成機構が異なることは容易に想像される。これを、酸化過程の反応律速領域と拡散律速領域にわけて現象をうまく説明したのがDeal-Grove則である。
これは10nm以上の酸化過程に関しては大変よく成立するが、ごく初期の酸化膜形成機構をうまく説明できない。実験的には、評価技術の躍進がめざましく、従来の膜厚をエリプソメトリで測定するというだけでなく、プローブ顕微鏡を用いた局所的な電子状態の計測、モホロジーの計測、あるいは光電子分光法(XPS)を用いた界面付近の原子の結合状態を探る計測などを駆使して、初期酸化では何が起こっているかが次第に明らかにされつつある。たとえば、最近、酸化膜は島状成長するか層状に酸化していくかに関して、XPS (X-ray Photoelectron Spectroscopy)、SREM(Scanning Reflection Electron Microscopy)を用いて層状に進んでいくことが報告されている(いわゆるlayer-by-layer成長)。酸化膜形成過程に関して、古くから初期酸化領域では、上記の Deal-Grove則で予測されるよりも厚くなってしまうことが実験的に観測されていた。実際の酸化はシリコンを室温から1,000℃程度の炉に入れるわけであるから、その途中段階で実験的に抑えられない部分があり、逆にこの部分はパラメータになってしまい、機構が異なるのか、実験的に抑えられていないためかの区別が難しかった。しかし、かなり精密に制御して酸化レートの実験をしても初期酸化の領域では Deal-Grove則よりも速い酸化が観測されている。これを説明するためにパラレル酸化モデル、二層モデル、といったいくつかの初期増速酸化モデル提案されているが、決定的なものはない。原子レベルで酸化がどのように進行していくかに関しては、最近多くの研究が報告され始めている。特に水素終端した表面に、いかに酸素が吸着・反応していくかということに関しては現実的にも重要であり、また理論との対比が可能な領域でもある。最近の理解では、シリコン表面の水素終端されたダイマーのSi-Hポンドの間にO原子が入り込むのではなく、ダイマーを構成するシリコンのバックボンドにO原子が入り込むとされている。理論的には酸素の物理吸着から反応に進む領域では、第一原理計算に基づく理論計算がなされている。典型的には、酸素分子のシリコン表面への接近、物理吸着から、酸索分子の原子への解離、化学結合というように進行していく。
このような計算では、吸着サイトがどこであるか、またどのような経路を通って反応が進行していくかは大変重要な部分であるが、経路に関してはO₂分子の配置に関してだけでも膨大な自由度があり難しく、典型的な初期配置をどう選ぶかが第一の課題になっている。また、ここでわかることは第一層目の酸素の吸着であり、第二層目以降の現実に重要な領域の第一原理計算はようやくこれからという段階である。この膜厚領域は科学的に興味があるというだけでなく、実際に1~2nmの厚さの酸化膜を使おうと思うと、まさにこの厚さを制御していくことになり、現実的にきわめて重要な研究領域になってきている。

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