半導体用語集

基板温度効果

英語表記:effects of substrate temperature

反応活性種の化学吸着のみならず、エッチング反応生成物、レジストマスク物質、堆積性ガスの分解種など堆積性を有する活性種の物理的な吸着に至るまで、中性の反応粒子の基板表面へ の吸着確率は、多くの場合、基板表面温度の低下とともに増大する。一方、 表面に吸着した反応活性種の表面層への侵入、および反応生成物の脱離に関する反応速度は、それぞれの障壁を越える活性化エネルギーを必要とするため、基板温度の低下とともに減少する。したがって、基板温度を低くすると、重合膜の堆積速度は増大する一方、反応活性種との自発反応によるエッチング速度は低下する。なおここで、反応活性種のみならずイオンの入射も存在する場合は、イオン入射が反応の活性化エネルギー障壁を低くするかもしくはなくす役割を担っているため、イオンアシスト反応におけるエッチング速度の基板温度依存性は小さい。このような温度効果により、エッチング速度だけでなく形状や選択比なども含めたエッチング特性は基板温度によって変化する。まずパターン側壁では、温度の低下とともに、反応活性種による横方向のエッチングが抑制されてアンダカットが小さくなり、さらに重合膜堆積による側壁保護の効果が大きくなり、形状の異方性が向上する。
温度をさらに低下すると、重合膜堆積がより顕著になり、側壁形状は垂直から順テーパに移行する。一方パターン底部では、重合膜堆積とイオン衝撃の物理的スパッタリングによる堆積膜の除去、およびイオンアシスト反応による基板表面の工ッチングとが競合しており,重合膜堆積が多大な系では温度を低くするとエッチング速度は低下する。また、パターン底部の被エッチング材料表面、下地材料膜表面、およびレジストマスク表面への重合膜堆積の温度依存性の違いは選択性の向上に寄与する。したがって、基板温度の低下により、あまりエッチング速度を低下させず、高異方性と高選択性を同時に満足させるプロセスが可能である。
基板温度効果は、poly-SiゲートエッチングやSiトレンチエッチングにおいて顕著である。パターン側壁の形状に関しては、反応活性種との自発反応の抑制と反応生成物の堆積による側壁保護により、フッ素系プラズマでは-100℃以下の低温、塩素系では-10~-50℃以下の中低温、臭素系では室温以下の温度で垂直形状がえられる。さらに低温での側壁形状はテーパになる。また、poly-Siのエッチング速度は基板温度の低下とともにゆるやかに減少するが、温度が約0℃より低下するあたりからSi02工ッチング速度の低下が大きくなり、高いSi/Si02 選択性が達成される。これは、エッチング反応生成物のSi02表面への選択的な堆積に起因するものと考えられている。フルオロカーボンプラズマによるSi02コンタクトホール・ビアホールエッチングでは、側壁表面へのフルオロカーボン重合膜の堆積速度が基板温度の低下とともに増大するため、側壁形状は数10℃程度の温度で垂直から順テーパに移行し、温度をさらに低下するとさらに大きなテーパが形成される。


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