半導体用語集

抵抗温度係数

英語表記:temperature coemcient of resistance

一般に、金属では絶対温度に比例して電気抵抗が上昇する。温度に対するこの電気抵抗の勾配を温度係数という。量子論によれば、理想的に周期的な結晶格子中では電子はまったく散乱を受けずに動くことができる。金属中の荷電粒子は電子となるが、その質量、電荷、電場、速度をそれぞれm、e、E、vとすれば運動方程式m・dv/dt=-eEがなりたち、一定時間τ以上経過した後は、v=- eτE/m=-μE (μ=eτ/mwを移動度という)の等速運動に落ち着く。
一方、電流密度Jは、単位体積当たりの荷電粒子の個数をn 、印加電圧をV、物体の長さをɭとした場合、J=-env=enμE =enμと表わされ、σ= ɭ/ρ=enμ (σは電気伝導率、ρは抵抗率である) が導かれる。 すなわち、電気伝導率は自由電子の密度と移動度の積で示せる。 このうち自由電子の密度は十分に大きく温度によらすはほ一定であるが, 結晶場の周期性を乱す熱振動、不純物などは、温度が上昇すると格子散乱、不純物散乱として自由電子の移動度を低下させることから、金属の伝導率は温度とともに減少することがわかる。電気抵抗あるいは電気伝導率に対するこの温度依存性は、絶対温度をTとしてρ=ɭ/σ=α+ßTの形で与えられる。αは絶対零度で残る残留抵抗であり、原子空孔、格子間原子、または転移などの結晶欠陥による電子の散乱に由来している。ßが温度係数と呼ばれる定数である。このうち半導体デバイスの多層配線金属として用いられる主な材料の温度係数をあげてみると、AIが0.0041K-1 (0 ~100℃)、Cuが0.0043K-1 (0℃)、Wが0.0050K-1(0~200℃)、Taが0.0035K-1(0℃)、Tiが0.003K-1(0~20℃)である。したがって、25℃ の室温からデバイスの大保障温度である125℃まで温度を上げた場合、各材料のバルク抵抗率はAlで2.62から3.69μΩ・cm、Cuで1.7から2.4μΩ・cm、Wで5.6から8.4μΩ・cm、Taで15から20.3μΩ・cm、Tiで58から75.4μΩ・cmまで上昇する。
こうした配線抵抗の増大はデバイスの動作速度を低下させる方向に働くため、最大保障温度でデバイス仕様を満足するように設計をするのが一般的である。


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