半導体用語集
洗浄表面計測
英語表記:evaluation Of cleaned surface
ウェハ表面に付着しているパーティクルの位置、大きさおよびその数を評価するために、パーティクルカウンタが用いられる。これはウェハを回転させ、それにレーザ光を斜入射させて、ちりの有無およびその大きさにより、散乱光の角度や強度が変化することを利用している。もちろんウェハ表面上のパーティクルのマッピングも可能である。徴量の金属不純物を評価するためには全反射蛍光X線分光(Total Reflection X-ray Fluorescence Spectroscopy: TRXF)や原子吸光法(Atomic Absorption Spectroscopy: AAS)が用いられる。TRXFはX線ビームをウェハ表面に非常に浅い角度(~1。) で入射し、表面の金属汚染物から励起、発せられる蛍光X線を検出する。蛍光X線のエネルギーとその強度で元素の同定とその濃度を定量できる。検出深さは全反射条件下で3~5nmで、検出感度は元素により異なるが、おおむね1010 atoms/cm2である。検出面積はlcm2程度であるので、ウェハ面内でのマッピングができ、また蛍光X線強度の入射角依存性により汚染物がパーティクル状か、または層状に存在しているのかを調べることができる。AASはシリコン基板上の自然酸化膜とともに金属不純物をフッ酸系溶液に溶解し、その溶液の原子吸光を調べる。検出感度は109atoms/cm2と非常に高感度であるが、破壊分析であり、また元素によっては前述の方法では回収が難しいものがある。簡易的に金属汚染されているのかどうかをSPV (Surface Photovoltage)などで表面少数キャリアのライフタイムを測定し評価する場合もある。この方法はシリコンの禁制帯幅よりも大きいエネルギーを持つ光をパルス状にウェハ表面に入射し、その時表面に生成される少数キャリアのライフタイムを求める。もし表面に金属汚染物が付着していると、それがキャリアの捕穫中心として働くのでキャリアライフタイムは短くなる。ウェハ表面に付着している有機汚染物の形態やその量を評価するために、ウェハを加熱していき、その時表面から脱離してくる有機物の質量数を質量分析器で調べる昇温脱離法 (Thermal Desorption Spectroscopy: TDS) が用いられることかある。 検出感度は非常に高いが、スペクトルの帰属が難しい場合があることや破壊分析であることが難点である。非破壊分析で、より直接的に付着有機物の化学状態およびその量を調べるために、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy: NPS)やフーリエ変換型の赤外分光法(Fourier Transform Infrared Spectroscopy : FT-IR) が用いられる場合もある。XPSは試料にX線を照射し、その時試料表面近傍からある原子のある軌道に由来する運動エネルギーを持つ光電子が放出され、また被測定原子の化学状態によってその運動エネルギーが異なる(化学シフト) ことから、その運動エネルギーを測定すれば元素分析はもちろんのこと、対象としている原子の化学状態まで評価できる。たとえば有機物の場合、最も励起断面積の大きい炭素の1s軌道から放出される光電子のスペクトルから CH、CO、CFなどの化学結合形態が表面近傍にどの程度の量存在しているのかがわかる。FT-IRは赤外光を試料に入射して反射あるいは透過してく る光のスペクトルには、ある結合形態の分子振動に由来する吸収(あるいは反射)がその結合形態に応した波長に現われることから、その吸収の現われる波長位置とその強度から、結合形態の同定とその量を見積ることができる。有機物の場合、C-H、C-O、C-Fなどの結合形態に由来する吸収が観察される。XPS、 FT-IRの検出感度は1012~1013cm-2とTDSよりは低いが、化学状態などの情報は豊富であるので、試料の状態や評価目的に応し、これらの方法を適宜使い分ける。シリコンウェハ表面に成長する自然酸化膜の有無を簡便に調べる方法として、接触角計が用いられることがある。フッ酸処理後のシリコン表面のように酸化物が存在せず、水素終端されていると、その表面は水をはじく疎水性の性質を示し、一方、酸化物が存在すると、その酸化物に含まれる水酸基に起因して表面は水となしむ親水性の性質を示す。このことを利用して水滴をウェハ表面に滴下し、その時の表面と水滴の接線のなす角(接触角)から酸化物の有無を判断する。表面が水素終端されている(疎水性)とこの接触角は90。前後、一方酸化膜に覆われている (親水性)と接触角は20。以下となる。また直接的に自然酸化膜の膜厚やその化学的な構造を評価する方法としては、前述のXPSとFT-IRがよく用いられる。XPSの場合、Si2p光電子スペクトルにはシリコン基板中のシリコンから放出された光電子のスペクトルと、それより3~4 eV高結合ェネルギー側に化学シフトした、自然酸化膜中のシリコンから放出された光電子のスペクトルが観察され、これらのスペクトルの強度比から自然酸化膜厚を見積ることができる。また、両スペクトルの間の結合エネルギー範囲には、中間酸化状態(サブオキサイド) のシリコンから放出された光電子のスペクトルが現われ、これより自然酸化膜の膜質を評価できる。FT-IRにおいては1,100cm-1付近に現われるSi-O-Si結合の伸縮振動に由来する吸収スペクトル強度から自然酸化膜厚を見積ることができる。また、自然酸化膜中に存在するSi-HやSi-OH結合などの結合種に由来する吸収も観察することができる。さらにSi-H結合を直接観察できることから、水素終端されたシリコン表面の評価にも用いられる。
ウェハ表面の物理的な凹凸(ラフネス)を評価する方法として、走査型トンネル顕微鏡 (Scannning Tunneling Microscope : STM)や原子間力顕微鏡 (Atomic Force Microscope : AFM)が用いられる。STMは探針をウェハ表面に近接させて、この時ウェハと探針の間に流れるトンネル電流の強度から表面の凹凸を評価する。しかし原理上、ウェハ表面に絶縁膜 (シリコン酸化膜など)が形成されている場合は評価できない。AFMはカンチレバーと呼はれる板ばねに針をつけ、 これを表面に近接させ、表面から針が受ける力によってはねがたわむことを利用しそのたわみの大きさをレーザ回折計にて検出することにより力の大きさを測定する。針が受ける力は表面の凹凸と相関があるので、これから表面の凹凸を評価できる。この方法は被測定表面が絶縁物で覆われていても評価できる。一般にSTMにおけるトンネル電流は表面凹凸の他に、局所的な電子の状態密度も反映することから、単に凹凸評価であるならはAFMの方がふさわしいと考えられる。しかしこの場合も針の大きさは考慮しなければならない。
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