半導体用語集

滞在時間効果

英語表記:effects of gas residence time

エッチング時のプラズマ中には、反応ガス分子とそのフラグメントの中性活性種やイオンなどエッチング反応種の他、エッチング反応生成物、 壁からの不純物、マスク材料からの物質など種々の反応生成物が含まれ、被エッチング表面に影響を及ばす。プラズマ中のこのような反応粒子の密度は、プラズマ反応装置(プラズマリアクタ)内における反応粒子の生成と消滅のバランスによって決まる。消滅に関わる要因は、プラズマ気相中の電子衝突や粒子同士の反応、固体表面(リアクタ壁、電極、および基板表面)への拡散と表面での反応、およびポンプによる排気である。ガス排気の特性時間はτ= V/S =PoV/Qoで与えられ、リアクタにおけるガスの滞在時間と呼ばれる。 ここで、Poはガス圧力、Vはリアクタの体積、Qoはガス流量、S=Qo/Poはポンプの排気速度を表わす。体積Vを小さくしたり、排気速度S を大きくすることにより滞在時間τを短くできるが、この滞在時間が消滅に関わる他の要因の特性時間と比較して同程度か短い場合、滞在時間の効果が顕著になる。一般に低圧力・高密度プラズマによるエッチングでは、プラズマ中に含まれる反応生成物の量が多く、ガス密度とほば同じ程度となる場合も多い。反応生成物の滞在は、リアクタ内の反応ガスの割合(分圧)低下に繋がるとともに、プラズマ中での再解離などにより生成された活性種の基板表面への再吸着・堆積などの間題を生じる。これに対して、真空ポンプの排気速度S を上げてガス流量Qoを増やすと(高速排気プロセス)、滞在時間τが短くなり反応生成物も高速排気される。結果として、リアクタ内の反応生成物の量が減少し、その再解離と再吸着・堆積の影響が抑制されるとともに、エッチング反応種の密度が増加しエッチング速度が増大する。たとえばC12プラズマによるSiエッチングでは、高速排気によりSiエッチング速度が増大し、Si/Si02選択性も向上する。しかしn+多結晶Siでは、滞在時間が短くなると、反応生成物の再吸着・堆積に起因する側壁保護の効果が低下して室温ではアンダカットが生じるため、異方性をえるには基板温度の低下(低温エッチング)が必要となる。なお滞在時間を極端に短くすると、反応ガスから生成される活性種をも排気してしまい、エッチング反 応種の密度低下を招くことになる。さらにまた、反応生成物の再吸着・堆積の影響は、基板表面のみならずリアクタ壁にも及び、フルオロカーボンプラズマにおける滞在時間効果は複雑でまだ十分に理解されていない。


関連製品

「滞在時間効果」に関連する製品が存在しません。

関連用語

関連特集

「滞在時間効果」に関連する用語が存在しません。




「滞在時間効果」に関連する特集が存在しません。




会員登録すると会員限定の特集コンテンツにもアクセスできます。