半導体用語集

炭化ケイ素(シリコンカーバイド)

英語表記:Silicon Carbide : SiC

 SiCの結晶構造には,元素の積み重ね方の違いにより六方最密構造と立方最密構造がある。六方最密構造には繰り返しの異なる100種類以上の多形(polytypism)がある。立方晶はβ-SiCのみである。いずれの結晶構造においても基本的にはケイ素または炭素が四面体の中心に位置し,四つのケイ素または炭素とsp³混成軌道を作って共有結合でむすびついているが,ケイ素と炭素の電気陰性度の違いによりイオン性が生じる。結晶多形は,積層順の多様性により生じる。SiC(2H-SiC)はAB,AB,AB・・という積層を取りウルツ鉱構造となる。一方,β-SiC(3C-SiC)は,ABC,ABC,ABC・・という積層で閃亜鉛鉱構造をとる。その他の六方最密構造の多形の代表例は4H-SiC(ABCB,ABCB,…),6H-SiC(ABCACB,ABCACB,…),15R-SiC(ABCACBCABCABCBA)で,最後のものは菱面体構造である。格子定数は,βがa=0.43596nm{a/2^(1/2)=0.3082nm},2Hでは,a=0.30763nm,c=0.50480nm,4Hではa=0.3076nm,c=1.0046nm,6Hではa=0.308065nm,c=1.500738nm,15Rではa=0.3073nm,c=3.730nmである。
 六方晶のバンドギャップはβ-SiCのバンドギャップ(4.2Kにおいて2.39eV)にくらべ1eV近く高い。2Hは3.33eV,4Hは3.265eV,6Hは3.023eV,15Rは2.986である。いずれも間接遷移型なので,発光材料としては効率が悪い。伝導度制御が可能であり,窒素(N)ドーピングでn型,アルミニウムAl,ホウ素B,ガリウムGaのドーピングでp型になる。pn接合が可能でありトランジスタが作製されている。移動度は室温で800cm²V⁻¹・s⁻¹程度,低温(77K)で3,000cm²V⁻¹・s⁻¹という大きな値を示す。バンドギャップが大きいわりに高移動度なので,へテロバイポーラトランジスタ(HBT)⋆として用いられる他,耐環境デバイス材料としても期待されている。
 SiCバルク単結晶は昇華法で作製される。グラファイトのるつぼにSiCの多結晶粉末を入れ,2,100~2,400℃に加熱昇華させ,グラファイト製のホルダに置かれた6H-SiC種結晶上に堆積する。成長温度は原料より100℃程度低温に設定される。薄膜はバルク単結晶を切断研磨したものを基板として,LPE法,CVD法などによって作製される。
 へテロバイポーラトランジスタ(HBT)のワイドギャップエミッタ材料には,CVDで作製されたSiCが用いられる。

⋆ へテロバイポーラトランジスタ;従来のバイポーラトランジスタではエミッタ,べース,コレクタに同じ材料が用いられたが,その変形として,pn接合部にヘテロ接合を用いると,エミッタとベース間の禁制帯幅の差を利用して高速動作がえられる。Heterojunction Bipolar Transistorの略である。


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