半導体用語集

熱抵抗の測定

英語表記:measurement of thermal resistance

 熱抵抗の測定には,半導体素子のジャンクション温度(Tj)を知る必要がある。Tjを測定する方法として,(1)半導体素子の温度に敏感な電気的なパラメータ(TSP: Temperature Sensitive Parameter)を用いる方法(TSP法),(2)熱電対を用いる方法,(3)赤外線放射温度計(サーモグラフィ)による方法,などがある。このうち,非破壊で実使用状態に近い熱抵抗が測定できる(1)の方法が広く一般に用いられる。

 (1) TSP(Temperature Sensitive Parameter)を用いる方法(TSP法)
 TSP法は,実際に搭載する半導体素子中に形成されているダイオードなどの特性が,温度に敏感な性質を利用して半導体素子の温度検知に用いる方法で,実際のデバイス以外に,発熱用ヒータ素子と温度検知用ダイオード素子を有する専用の熱抵抗測定用テストチップを用いることもある。TSPとして用いる温度に敏感な電気的なパラメータとして,ダイオードの順方向電圧,バイポーラトランジスタのベース・エミッタ間電圧,FETのドレイン・ツース間電圧などがある。基本的には,あるデバイスにおいて温度に対して一意的に決まる何らかの電気的パラメータがあれば,それを利用して温度を検知することができる。
 TSP法による熱抵抗測定は三つのステップからなる。そのステップは,①恒温槽内でのTSP-温度依存性の測定,②実際の実装条件(実装形態,冷却条件,消費電力など)下におけるパッケージが熱平衡状態に達するまでのTSP測定,③熱抵抗(Θja)の算出である。熱抵抗は,①でえられたTSPの温度依存性のグラフの傾き(K),②から計算されるTSPの変化分(⊿V=|熱平衡時の値-初期値|),消費電力(Q)から,式(5)によって求まる(下部画像参照)。

 一方,Θjcは位置(たとえばヒートシンク取りつけ箇所)を指定し,その場所の温度(Tc)を熱電対などを用いて測定することで,式(6)により求められる(下部画像参照)。ただし,Tjは,TSPの温度依存性のグラフ(直線近似式:Y=aX+b)から直接算出する。

 Θjcは,同じパッケージでも測定場所,冷却条件などによって値が異なるので注意する。
 TSP法では,実際に用いるものと同じ寸法の半導体チップを用い,同じ条件でアセンブリを行うことが重要である。また,テストチップで代用する場合,半導体素子の発熱の仕方(発熱領域の分布)も熱抵抗値に影響を与えるため注意する。


 (2) 熱電対を用いる方法
 熱電対を用いる方法は,熱抵抗の算出で必要になる,半導体素子温度(ジャンクション温度),周囲温度(環境温度)などを,検知個所に直接熱電対を設置して測定する方法である。しかし,内部に封止されている半導体素子への熱電対の設置が難しく,また熱電対設置方法によって測定値が変動し正確な測定が難しいなどの問題がある。主に,内部熱抵抗Θjcを測定する場合,実装基板の温度分布を調べる場合などに用いられる。


 (3) 赤外線放射温度計(サーモグラフィ)による方法
 赤外線放射温度計(サーモグラフィ),による方法は,物体表面から出る熱輻射エネルギーから表面温度を算出するもので,主に実装時の温度分布を測定する際などに用いられる。しかし,パッケージ内部の半導体素子温度を測定することができない,正確な温度測定には,非測定物の輻射率の正確な見積りが必要,などの問題があり,パッケージの熱抵抗の測定法としては,あまり用いられない。


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