半導体用語集
熱拡散過程
英語表記:diffusion process
固体結晶中における原子の拡散の基本的過程は、原紙があるエネルギー障壁を越えて隣の格子位置へ移動することであり、このエネルギー障壁を飛び越えるジャンプ頻度wは、
w=gve-Gm/kT
で表される。ここで、gは原子が次の平衡位置へ行く時にジャンプ可能な工程の数、vは結晶の原子振動の振動数、Gmは原子がエネルギー障壁を飛び越える時の原子の自由エネルギー、kはボルツマン定数、Tは絶対温度である。gは結晶構造によって異なる値を持ち、たとえば面心立方格子では、g=12である。また、vは約1013/sである。不純物原子が格子間をぬって拡散する時のジャンプの過程とエネルギーの変化を図1に示す。
Gmは自由エネルギーであり、エンタルピーHmとエントロピーSmを用いると
Gm=Hm-TSm となる。
この多数回の原子のジャンプは、ブラウン運動の場合と同じように統計的に扱うことで、巨視的な原子の移動を表す拡散係数Dと関係づけることができる。この関係は、ジャンプの回数が著しく多いこと、それぞれのジャンプの距離は一定であることを基に、Einsteinより示された。
ここで、rは原子のジャンプの平均距離、Fは相関係数である。原子のジャンプは、まったくでたらめではなく、たとえば空格子点と位置交換した原子は、次のジャンプにおいて再び空格子点と位置交換する確率が高くなる。このようにジャンプに相関があると、F<1となり、拡散係数は小さくなる。拡散係数をHm、Smを用いて書き直すと、
となる。一般に拡散係数はアレニウスの式、
D=Dοℓ -Q/kT
で書かれる。したがって、
となる。Dοは振動数項あるいはSmを含むのでエントロピー項と呼ばれる。エンタルピーHmは拡散の活性化エネルギーQに対応する。もし不純物原子がその隣に空格子点がきた時のみに拡散する場合(空格子点機構と呼ばれる)には、不純物原子の隣に空格子点がいなければならないので、ジャンプ頻度は小さくなる。すなわち、先のジャンプ頻度に空格子点の濃度(モル濃度)、
Nv/NL=ℓ-Gv/kT
を掛ける必要がある。ここで、Nvは空格子点の熱平衡温度、NLは結晶格子点の濃度、Gvは空格子点を形成するための自由エネルギーである。Gmと同様にGvに対しても、Hv、Svを導入すると、この場合の拡散係数は
𝐷o=1/6Fg
となる。Hvは空格子点を形成するためのエンタルピーで、空格子点形成エネルギーともいい、また、Svは空格子点と隣の原子との相互作用の結果生じるエントロピーの増加分である。
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