半導体用語集

窒化インジウム

英語表記:InN

 結晶構造:主にウルツ鉱構造を取る。格子定数:a=0.3544nm,c=0.5718nm(閃亜鉛鉱構造では0.498nm)。バンド構造:直接遷移型。エネルギーギャップ:2.4eV(LT),2.05(1.95)eV(RT)。有効質量:伝導帯mc*/m₀=0.11,バンド端平均正孔質量として,mv*/m₀=1.6が見積られている。フォノンエネルギー:LO=73.9meV(A₁,E₂),TO=49.6meV(A₁),60.8meV(E₁)(ウルツ鉱構造),LO=72.9meV,TO=56.7meV(閃亜鉛鉱構造)。変形ポテンシャル:a=-2.8eV。弾性定数(×10¹¹dyne/cm²):c₁₁=27.1,c₁₂=12.4,c₄₄=4.6(ウルツ鉱構造),c₁₁=18.4,c₁₂=11.6,c₄₄=17.7(閃亜鉛鉱構造)。融点:1100℃。
 GaNとの混晶InGaNは窒化物系青色,緑色LEDの発光層に使用されている。InxGa₁₋xNのエネルギーギャップはEg(x)=1.02x²-2.63x+3.50(eV)で与えられる。GaN,AlNは高品質の結晶を成長するのに通常1,000℃以上の温度が必要であるのに対し,InNは低い温度でないと分解してしまう。したがってへテロ構造を作製する際は,~800℃位に温度を下げ,かつInの供給量を大きくしてInGaN層を成長する。InNとGaNは格子定数のずれが大きく,歪による結晶性の劣化を防ぐために,薄いInGaN/GaN量子井戸構造にする必要がある。市販されている青色LEDは,In組成20%,井戸幅3nmの構造で,光出力5mW,450nmを中心とした発光スペクトルがえられている。緑色LEDではさらにIn組成を増加させ,ピーク波長525nm,3mWの光出力がえられる。現在こうした窒化物系発光素子はMOVPEによって量産されている。


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