半導体用語集
表面再配列と緩和
英語表記:surface reconstruction and relaxation
結晶表面の原子は一般に、結晶内のバルク原子配列から切り取られた原子面の配列を取らない。結晶のバルク原子配列はバルクの自由エネルギーを最小にするが、必ずしも表面の自由エネルギーを最小にしない。結晶表面の原子は表面形成によるエネルギー損失を最小にするよう、内部結晶面とは異なった対称性を持った表面原子配列変化や表面近傍での原子面間隔変化を引き起こす。前者の原子構造変化を表面再配列と呼び、後者の原子構造変化を表面緩和と呼ぶ。
多くの金属清浄表面は再配列を示さないが、共有結合性半導体表面においては表面再配列は顕著に起こる。共有結合で結品を作る半導体の表面では、共有結合が切られたダングリングボンドが生じる。結合相手を持たないダングリングボンドの状態はエネルギー的に不利なので、半導体表面はダングリングボンド数を減らすよう原子位置を変えて表面再配列を引き起こす。表面再配列の例として、Si(111)面では結晶内(111)原子面に比し、面内2方向に7倍の長周期を持つ7×7再配列構造、Si(100)面では非対称ダイマーが交互に配列したc (2×4)再配列構造がある。どちらの表面再配列原子構造も実験的に解明されており、第一原理計算の結果、最安定な表面構造であることも判明している。表面再配列は、清浄表面だけでなく吸着表面でも多数観測されており、表面物質、方位、温度により異なった、きわめて多様な相図を示す。表面緩和は多くの金属においてみられ、最外層と第二層の原子面間隔の減少が多く観測されている。表面緩和の大きさは結晶内の面間隔の数%程度になり、一般的に表面原子密度の小さな表面で大きい。これらの特徴より、金属の表面緩和は最外層の電子密度の平坦化により、イオンが結晶内部に引き込まれて起こると解釈されている。表面再配列による原子構造変化は、回折像、実空間像の両方で観測されている。回折像観察は透過電子線回折(TED)、反射高速電子線回折(RHEED)、低速電子線回折(LEED)などにより、実空間像は走査型トンネル電子顕徴鏡(STM)、原子間カ顕徴鏡(AFM)などにより観察されている。表面緩和における原子面間隔の変化は、RHEED、LEEDのスポット強度解析から評価される。
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