半導体用語集

表面電気伝導

英語表記:surface electric conduction

表面近傍における表面に沿った方向の電気伝導を表面電気伝導と呼び、結晶内のバルク伝導と区別する。電気伝導への表面の寄与としては図1に示すように、(1)表面に局在した表面電子状態での伝導、(2)表面近傍での空間電荷層、すなわちエネルギーバンドの表面垂直方向の湾曲(バンドベンディング)領域での伝導、(3)基板上の薄膜内伝導が存在する。表面電気伝導への(2) (3)の寄与は以前から知られていたが、最近になって(1)の伝導の存在も確認されてきている。
(3)の薄膜内伝導は、絶縁体、半導体基板上の金属薄膜で多く測定されており、膜厚増加に伴い電気伝導度びは増加する。これは伝導に寄与するキャリアの表面・界面での散乱効果が膜厚増加に伴い減少するためである。Si (111)基板上のエピタキシャル成長 Ag薄膜の比抵抗ρ=σー1の膜厚依存性は、膜厚dの減少に伴いp∝dー3(数10nm>d>数nm)からp∝dー3 (数10nm > d>数nm)への変化が観測されている。この変化は、dが伝導電子の平均自由行程より小さくなると表面ラフネス散乱が効いてくることによると解釈されている。表面ラフネス散乱では, 表面・界面の粗さに起因した膜厚分布効果により比抵抗が増大する。Si基板上では、膜厚が1原子層以下のAg 膜の伝導も低温で測定されている。Ag被覆率増加によりAg原子を伝わって電子が流れるパスが形成されることによる、パーコレーション転移が観測されている。
(2)の寄与は半導体表面電気伝導の吸着子被覆率変化で多く観測され、バンドベンディングによる主に半導体内表面近傍のキャリア濃度の変化を通して生じる。キャリア濃度の増減により、表面電気伝導に正負の寄与をする。バンドベンディングは図1に示す ように、表面フェルミ準位と結晶内のバルクフェルミ準位をそろえるために生しる。表面フェルミ準位は、吸着子の被覆率に依存して定まる。バンドベンディング領域の幅は通常、0.1から数μmのオーダとなり、空間電荷層での伝導には、散乱機構の変化は余り寄与しないと考えられている。MOS構造などの半導体界面に形成される反転層、蓄積層の電気伝導には、界面のラフネス散乱の寄与が効いてくる。半導体の表面電気伝導の1原子層以下の原子吸着による変化は、多くのこの機構によると考えられてきた。しかし最近は、原子吸着により表面再配列した表面の表面電子状態による伝導(1)の存在も確認されてきている。(1)の表面電子状態の伝導の直接測定は、いくつかの系について最近なされてきている。表面再配列した7×7Si(111)清浄費面には、金属的表面電子状態が存在することが知られている。Si(111)面の微細加工技術を用いて、1998年に表面電気伝導測定がなされた。測定された表面電気伝導度はバルクSiの電気電導度はバルクSiの電気電導度に比し非常に小さいが、金属的表面電子状態を伝わって電流が表面上を流れることが確認された。


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