半導体用語集
透過型電子顕微鏡法
英語表記:transmission electron microscopy
試料を透過した電子線をレンズ系を用いて結像する透過型の電子顕微鏡である。試料内で散乱・回折された電子線からは結晶構造・組成などを反映した情報がえられる。古くから広く活用されており,現在でも最も重要な顕微鏡の一つとなっている。装置構成および結像原理は光学顕微鏡と類似しており.光を電子線に置き換えれば理解することができる。すなわち.電子銃から放出された電子線は収束レンズ系により細く絞られ試料に照射される。試料を透過した電子線は対物レンズおよび投影レンズなどで拡大され蛍光板上に投影される。
顕微鏡像を形成するコントラストには,(1)試料厚さや構成原子の原子番号の違いに起因する散乱コントラスト,(2)結晶面のブラッグ反射条件の違いに起因する回折コントラスト, (3)透過電子波と回折電子波の干渉により発生する位相差コントラストなどがある。結像に用いる電子の散乱角度により,これらのコントラストを選択することができ,異なる物理量を観測することができる。
小さな対物絞りを用い透過電子線で結像した明視野像からは散乱・回折コントラストの差により積層構造,膜厚分布,微粒子形状,結晶欠陥などが低~中倍率(直接倍率:5,000~100,000倍)で観測できる。この場合,高分解能像よりも組成や結晶性の違いに基づくコントラストが強調される。特定の方向に回折する電子線のみを選び結像させた暗視野像からは結晶の配向分布や結晶欠陥の分布状態が観察できる。大きな対物絞りを用い,透過波といくつかの回折波を干渉させて結像させれば高分解能像(40万~100万倍)が観測できる。これにより異なる原子より構成されるヘテロ界面の格子整合性や欠陥近傍の原子配列の乱れなどが親察できる。
透過型電子顕微鏡で試料観察を行い像のコントラストをえるには試料厚さに制限がある。通常の100kVの加速電圧では試料厚さは高々100nmである。そのため,電解研磨法,化学研磨法,イオン研磨法などを用いて試料を薄膜化しなければならない。
透過型電子顕微鏡に分析機器を組み込んだ装置を分析型電子顕微鏡と呼ぶ。電子顕微鏡の像観察に加え元素分析などの機能を持つ装置である。電子顕微鏡観察から分析領域を選び,その領域に電子線を照射して試料から発生する特性X線などを検出して元素組成を求める。電界放出型電子源を搭載した電子顕微鏡を用いれば1nm程度の分解能で分析が可能である。半導体などの微小部評価で重要となる手法である。
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