半導体用語集

運動量緩和時間

英語表記:momentum relaxation time

 半導体が熱平衡状態にある時、キャリア(電子または正孔)は、その温度の熱エネルギーに相当する速度でそれぞれバラバラな方向に運動している。そこに外場(電界)を加えると、キャリアが電子の場合は電界と反対の向きに、正孔の場合は電界の向きに加速される。すなわち、電界によりキャリアの運動量が変化する。加速されたキャリアは、格子振動、不純物などにより散乱され、電界からえた運動量を失う。散乱が単位時間当たりに起こる確率を1/τとする時、τを運動量緩和時間と呼ぶ。単に緩和時間と呼ぶことも多い。キャリアの有効質量をm*、速度をv、電荷素量をe、電界をEとすると、キャリアの運動方程式は d(m*v)/dt=-eE-m*v/τ で与えられる。ここでは、キャリアとして電子を仮定したので、右辺第一項に負号がついている。定常状態を考え、多数のキャリアの平均をとると、キャリアの平均速度〈V〉を用いて、緩和時間は τ=m*〈V〉/eEと表わされる。この式では、直感的に理解しやすい有効質量と速度を用いているが、結晶中では波数kが良い量子数であるので、厳密には hk/2π=hk(結晶運動量)に対する運動方程式を考えなければならない。ここで、hはプランク定数である。その場合でも見かけ上同一の運動方程式が導かれる。運動量緩和時間は散乱機構によって決定されるが、さらに波数、温度などにも依存し、直接測定することは通常困難である。そこで、緩和時間よりも、移動度 µ=τe/m*(キャリアとして電子を仮定した場合は、右辺に負号がつく)が議論されることが多い。

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