半導体用語集

電界放射型顕微鏡法

英語表記:field emission microscopy

 電子がポテンシャル障壁を透過する物理現象,すなわち量子力学的トンネル効果を利用した顕微鏡が電界放射型電子顕微鏡と電界イオン顕微鏡である。前者は表面電子状態や表面拡散などの表面現象を,後者は表面原子の配列を観察できる高分解能顕微鏡として知られている。
 電界放射型電子顕微鏡では試料の先端を尖った針状に加工した後に負の高電界を印加する。試料表面の電子は電界放出され蛍光面に拡大投射される。その結果,試料の先端構造の拡大像がえられる。この顕微鏡は1937年にE.W.Mullerによって発明されたのでミューラー顕微鏡とも呼ばれる。拡大倍率は針状試料先端の曲率半径(r)と試料表面から蛍光面までの距離(R)の比(R/r)でほぼ決まり,容易に10⁶倍に達する。しかし,像の分解能は放出電子の初速度の接線方向成分のために通常~2nm程度であり,結晶表面の原子を個々に分離して観測するには十分ではない。
 電界放出の強度は試料表面の仕事関数にきわめて敏感である。結晶表面の仕事関数は面方位が異なれば若干差があるから,蛍光面上の像パターンは試料表面の面方位に対応した物となる。試料表面に不純物が付着していると電界放出強度は大きく変化するから,不純物の挙動を調べることができる。試料先端に異種原子や分子を蒸着し電界放射電子像を調べることから,吸着物質の表面拡散現象や吸着脱離過程が調べられている。
 放出電子のエネルギー分布を測定すれば,各結晶面から放出された電子のエネルギースペクトルを求めることができる。電界放射電子分光法と呼ばれ,結晶表面の電子状態を調べる有力な研究手段となっている。


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