半導体用語集

Dynamic-SIMS

英語表記:Dynamic-Secondary Ion Mass Spectroscopy

 Secondary Ion Mass Spectrometry(二次イオン質量分析法)は,一次イオンの照射によって,試料から放出された二次イオンを質量分析し,試料に存在する元素,または分子種を同定,定量する手法の総称である。SIMSはStatic-SIMSとDynamic-SIMSに大別される。Dynamics-SIMSでは一次イオン量をStatic-SIMSよりも多くし,スパッタリング現象を積極的に利用することにより,注目元素の深さ分布をえることを目的とする。たとえば半導体工業では,pn接合形成のためにイオン注入された不純物元素の深さ方向分析(デプスプロファイリング)やドーズ量のモニタなどが代表的な応用例である。一次イオンとしては³²O₂⁺イオン,¹³³Cs⁺イオンが一般によく用いられ,加速電圧はおよそ1keVから15keVまでが多い。一次イオンビーム径は最小でもおよそミクロンオーダのものが一般的で,二次イオン像をみることもできる。O₂⁺イオンは正の二次イオン検出に,Cs⁺イオンは負の二次イオンおよびMCs⁺分子イオン検出用に用いられる。その他,⁴⁰Ar⁺やXe⁺, Ga⁺イオンが一次イオン種に用いられることもある。
 二次イオン質量分析系には四重極型のものとセクタ型(二重収束型)のものがあり,どちらも質量範囲は1amuから300amu程度のものが多い。セクタ型の装置は質量分解能が高く,たとえばシリコン中の³¹Pと干渉ピークである³⁰SiHを分離することができる。一方,四重極型の装置では1amuの分解能でしか質量の分離ができないが,操作が簡単な上,試料が接地電位に近いため,絶縁体試料に対して電子吹きつけによる帯電中和が行いやすいなどの利点がある。元素の検出下限は対象元素に依存するが,感度の高い元素に対しては10¹⁴atoms/cm³以下(ppbオーダ)が期待できる。一般にはセクタ型の方が検出下限は低い。デプスプロファイルの生データは縦軸-二次イオン強度,横軸-スパッタ時間であるが,これを濃度-深さの関係に換算するためにはキャリブレーションを行う。横軸はスパッタによって形成されたクレータの深さ(段差計などで実測した値)を基にし,縦軸は同一のマトリックス組成の標準試料(不純物濃度は既知)を同じ条件下で測定し,相対感度因子(Relative Sensitivity Factor)を求めて行うのが普通である。ドーズ量既知のイオン注入試料では,ドーズ量と深さから濃度を導き出すこともできる。デプスプロファイル測定時における深さ分解能は,主に一次イオンによるターゲット原子のミキシングやノックオン効果,およびスパッタ面に生じた微細な表面荒れなどにより制限される。前者は一次イオンの加速エネルギーに比例して劣化する。エネルギーが低いほど深さ分解能は向上する。最近ではULSIの微細化により,浅い接合を正確に求めることが要求されており,高深さ分解能のデプスプロファイルをえることを目的として低加速(1keV以下)の一次イオンビームが使用されている。このエネルギーレンジではノックオンによる影響は著しく低減され,おおむね1nm以下の深さ分解能が逹成されている。スパッタ面の荒れに関しては,ターゲットと一次イオン種,エネルギー,入射角度などの兼合いにより様々に変化する場合がある。
 一次イオン照射に伴う二次イオン発生機構については不明の部分があるが,酸素イオン照射の場合,Ar⁺やXe⁺照射の場合に比して,正二次イオンの強度が2桁以上も増強される効果はよく知られている。Ar⁺やXe⁺イオン照射と同時に試料画に酸素ガスを一定量吹きつけても同様の効果がえられる。これは入射酸素により試料表面に形成された酸化膜が高い仕事関数のポテンシャル障壁を持つため,発生した正二次イオンが表面から脱離する際に受ける電子移動による中和が高いトンネル障壁により妨げられるためと解釈されている。
 二次イオン強度の濃度への変換は通常,マトリックス元素の二次イオン強度がスパッタ開始後一定値に達すれば,不純物元素の二次イオン化率も一定になるという仮定のうえで行われる。二次イオン強度が定常に達するまでの領域は遷移領域と呼ばれ,ここではスパッタ速度も変化していると考えられている。遷移領域は一次イオンの加速エネルギーが低いほど小さくなる。極表面近傍にドーパント濃度が集中する浅い接合の測定には遷移領域の小さい低加速一次イオンビームの使用が望ましい。


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