半導体用語集

Qʙᴅ  

英語表記:charge-to-breakdown

 絶縁膜が絶縁破壊するまでに流れた単位面積当たりの電子の総量(charge-to-breakdown)。単位は(C/cm²)。酸化膜の基本特性を示す量であり、異なる手法で形成された膜、あるいは異なる膜厚の絶縁膜、あるいは酸化膜にかかる電界、温度を変えた時にQʙᴅがどうなるかは絶縁膜開発の大きな指針となっている。たとえば一定電流密度Jg(A/cm²) のストレスが酸化膜にかかるようにバイアスを設定したとする。これは、電極でいえば陰極側の酸化膜電界を一定にそろえたことに対応する(酸化膜には電界を印加するとFowler-Nordheim電流が流れる。この場合の電流は注入側の電界で決まってしまう。逆にいえば、電流を一定にそろえれば注入側の電界をそろえたことになっている)。このような状況下で、絶縁破壊するまで電流を流しつづけて、t=гʙᴅの時に壊れたとすると、Qʙᴅ=Jg×tʙᴅと表わすことができる。一定電圧でのストレスを加えた時には、Qʙᴅを求めるには電流の時間変化を測定していく必要がある。 Qʙᴅは、酸化膜の特性を示すよい指標になっているが、その物理的解釈にはかなり複雑な過程が入り込んでいる。そこには絶縁破壊が一体なぜ起こるのか、絶縁破壊が起きるということはどういうことなのか、電流を流し続けるとなぜ絶縁破壊するのか、というきわめて素朴であるが基本的問題が含まれている。現象論的には、欠陥生成に伴う電圧、あるいは電流の暴走が起こり カタストロフィックに絶縁破壊が起きると考えられるが、微視的にどんな欠陥生成が本質的に破壊に効いているかなど、本質的な部分はまだ不明な部分が多い。Qʙᴅの酸化膜電界依存性、極性依存性(ゲートの正負を変えた場合のQʙᴅの違い)、酸化膜厚依存性は、現実的なデバイスにおける酸化膜の寿命の極限を見積るうえできわめて重要であるが、現時点でも多くの考え方がある。ナノメータ級の薄膜領域での特徴として、最近特に強調されるのは、電界ではなく電圧がよい物理量である点である。特に5nm以下の酸化膜を議論する時にはこのことが重要である。これは、劣化を引き起こす現象自体が酸化膜にかかる電界によって律速されているのではなく、加速された電子のエネルギーに律速されていることからきていると考えられている。2∼3nm領域では、直接トンネル領域での信頼性を取り扱うことになるだけでなく、界面の平坦性であるとか、膜厚の均一性などに従来以上に注意しなくてはならない。また、破壊自体が確率的に起こる現象であるから、統計的な理解と微視的理解との結びつきをめざした研究が必要とされている。

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