半導体用語集
QMS (四重極質量分析)
英語表記:Q u a d r Ⅱ 0 0 1 e M a s s Spectrometer
プラズマ中の中性分子やイオンなどの粒子の種別、その密度、エネルギーおよび荷電数などを粒子的に計測する方法を質量分析と呼ぶ。質量分析の方法には、イオンのラーモア半径の質量の違いを利用する磁場偏向型、イオンの到達時間の質量による差を利用する飛行時間型、4本の電極に振動電圧を印加して特定の質量のイオンだけを通過させる四重極型がある。この中で、四重極質量分析計 (QMS)が最も広く用いられている。
四重極質量分析計において、四重極部は4本のロッドを平行に配置させて向かいあった電極同士を結んで、直流電圧と高周波電圧を同時に印加して四重極型の電界を発生させる。この中にプラズマ中のイオンを入射させると、その運動方程式はMathieuの微分方程式になる。この解は、イオンの質量mと電荷eの割合の値(m/e)によって、指数関数的に発散する不安定な解と周期的に振動する安定な解になる。不安定な解の方は、イオンはロッドに衝突して電荷を失うが、安定な解においては、イオンは4本のロッドの間を通過する。このように、m/eで選択された、イオン種のイオン電流を直接測定することにより、イオン種とその密度を測定することができる。また、検出系は二次電子増倍管を用いて感度を高めることが多い。四重極分析計を用いてプラズマの中性粒子を計測する場合は、フィラメントからの熱電子を加速して、通常70 eVの電子ビームを中性粒子に衝突させてイオン化し、イオンを発生させる。この場合、分子からは複数のイオン種が生成され、これらのイオンを計測する。当然ながら、被測定中性粒子は分解されているので、測定されたイオンの主ピークと副ピークの比から、基の中性粒子の種類を解析することが必要である。これらの比は、パターン係数と呼ばれ、分析器と使用条件が一定であれば計測分子に固有のものである。
プラズマ中の圧力は通常高いので、 差動排気を行い質量分析計の内部を高真空に保つことが必要である。そのために、通常、プラズマと質量分析計の間にオリフィスを開け、オリフィスを通過した粒子を計測する。オリフィスの孔径はプラズマのデバイ長よりも小さくして、質量分析計の中にプラズマが入らないようにすることが必要である。また、高エネルギーの電子が質量分析計内へ流入するのを防ぐために、オリフィスの電位はプラズマ電位よりも十分に低くすることが必要である。さらに、中性粒子を計測する場合は、イオンの荷電粒子を除去するために質量分析計の電位を高くするような対策が必要である。磁場を用いているプラズマにおいては、磁場による影響を防ぐために、磁気シールドを行うことが重要である。
プラズマ中の電荷を持たない中性のラジカルの検出には、出現質量分析法が用いられる。通常、特定したいラジカル種をイオン化する場合、プラズマ中の分子性ガスもイオン化しフラグメントイオンを生成する。したがって、多量に存在する分子性ガスからの解離イオンの信号が被測定対象のラジカルのイオン化による信号をおおってしまいラジカルの検出が不可能である。出現質量分析では、分子ガスからの解離イオン化が起きる過程とラジカルのイオン化によるイオン生成過程の間には、イオン化のための最低の電子衝突エネルギー(出現エネルギー)に差が生しる。これを利用して,質量分析計のイオン化のための電子ビームエネルギーを分子ガスの解離イオン化エネルギーよりも低くかっラジカルのイオン化出現エネルギーよりも高くすることにより、選択的にラジカルをイオン化 させることが可能になる。このような方法によってラジカル種の密度を計測する方法を出現質量分析法と呼ぶ。反応性プラズマ中の多くのラジカル密度の計測に応用されている。
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