半導体用語集

Si異方性エッチング

英語表記:Si anisotropic etching

アルカリ系溶液を用いると面方位の差による異方性エッチングが可能になる。この理由は、アルカリ液の方が酸性液とくらべてエッチング速度が大幅に低いことが主な原因である。エッチング反応の基本は「エッチング機構」で述べたと同様に酸化・還元反応である。KOH、ヒドラジン、エチレンジアミン(EPW)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)のようなアルカリ液の水溶液中のH20が酸化剤になる。一方、溶解に関係する試薬はイソフロパノール、プロパノール、ブタノール(異性体)、バイロカテコールのようなアルコールが用いられる。これらに水の存在は溶解反応に特に重要であり、水の導入が不可欠である。Siエッチング速度は{111}面が最も遅く、{100}と{110}面は{111}よりも早く、この両者はエッチング液に依存する。この原因は、{100}面と{110}面のダングリングボンドが2本に対して、{111}面のそれは1本であり、反応性が低いことにあり、条件によってはエッチング速度が1/200ほどになる。{100}面と{110}面のエッチング速度は1~2μm/分程度である。エッチング温度は液種によって異なるが、80~100℃に保持し、水の蒸発を防ぐため容器を石英板などによりふたをし、一般に拡散率速なので還流や撹拌も必要である。KOHの場合は、平滑面が得やすいが、SiO2のエッチング速度が速く、Si3N4膜がマスクとして使用される。{100}面をSiO2マスクなどでエッチングすると、{111}面に沿って55度にV字形に掘りおこされる。このような凹構造では、{111}面が現れてエッチングが停止するが、凸型の残し部分以外を掘りおこす構造では、角部の原子はダングリングボンド数が多いためコーナカットと呼ばれるエッチングが進み、角のパターンを寸法的に補償したパターンを用いて軽減が図られる。ヒドラジン(NH2(CH2)2NH2)とバイロカテコールC6H4(OH)2によるSiエッチング機構は、まずヒドラジンが水の存在でイオン化して(OH)ーが生じ、これがSiと反応してSi(OH)62-なる酸化反応を生じ、Si(OH)62-がC6H4(OH)2とアミン反応を起こして、錯イオンを形成して溶解する。KOHの場合もやはりSiがSi(OH)62-Sの錯イオンとなって溶解する。EPW液では、EPWと水によってSiが酸化されてSi(OH)62-が生じ、さらにパイロカテコールにより錯イオンSi(C6H4O2)32-となって溶解する。


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