半導体用語集

TiSi₂/C₄₉構造

英語表記:C₄₉ structure

 TiSi₂のC₄₉構造は、チタンとシリコンの固相反応が起こる際に形成される、準安定状態の結晶構造である。結晶は体心斜方晶構造で、粒径は数10nmと比較的小さく、比抵抗は60∼70 µΩ・cmと高い。C₄₉構造のTiSi₂にさらに高温の熱処理を加えると、グレイン界面を起点として、安定状態であるC₅₄構造へ相転移する。C₅₄構造は面心斜方晶構造で、結晶粒径は数100nm∼数µmと大きく、比抵抗は13∼15 µΩ•cmと低い。C₄₉-TiSi₂形成反応の活性化エネルギーが1.6∼2.6eVであるのに対して、C₄₉-C₅₄相転移の活性化エネルギーは4∼8eVと大きいため、低抵抗なC₅₄構造を形成するためには高温長時間の熱処理が必要である。しかし、TiSi₂膜に800℃以上で長時間の熱処理を加えると、島状の不連続膜へと変化する、「凝集」と呼ばれる現象が発生し、シート抵抗は上昇してしまう。したがってTiSi₂のサリサイド技術では、C₄₉-C₅₄相転移が可能で、かつ安定したC₅₄構造が保たれるような熱処理条件の最適化が重要である。さらに、シリサイド層の膜厚や構造、基板中に含まれる不純物の種類と濃度によって、C₄₉-C₅₄相転移やC₅₄構造の凝集が発生する熱処理条件が異なる点に注意が必要である。一般に、C₄₉構造からC₅₄構造への相転移は、シリサイド層の膜厚が薄い場合、シリサイドの配線幅が狭い場合、高濃度不純物が添加された場合には抑制される傾向があり、一方C₅₄構造の凝集は、シリサイド膜厚が薄くなると発生しやすくなる傾向を持つ。したがって、LSIの微細化に伴って安定なC₅₄-TiSi₂構造を形成できる熱処理条件の幅は、ますます狭くなる傾向にある。C₄₉-C₅₄相転移を促進しプロセスウインドウを拡大する技術としては、プリアモルファス化法や高温チタン法が報告されている。前者は、チタンを成膜する前にイオン注入を行い、シリコン表面を非晶質化する方法で、後者は、チタンを成膜する際に400∼500℃の高温に保つ方法である。いずれの方法でも、Ti膜を成膜した際に形成されるTi-Si非晶質層が変化することで、C₄₉構造の核形成が起こりやすくなっているとされている。C₄₉構造の核形成密度が大きくなると、C₄₉結晶粒の粒径が小さくなりグレイン界面の密度が増加して、C₅₄構造への相転移が起こりやすくなると考えられている。

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