半導体用語集
クラスタイオンビームデポジション
英語表記:ionized cluster beam deposition
広義にはイオンビームデポジション法の一つであるが、一般的にはイオンビームデポジション(ion beam deposition)とは区別されて用いられる用語である。物理的成膜技術の一つである。
クラスタ(cluster)とは、あえて和訳するならば塊状原子集団という。数10個から数1,000個程度の原子の集合体であり、原子や分子のミクロな系とも、また固体や液体などマクロな物質系とも異なる性質を示し、物質の新しい形態とみなされている。クラスタイオンビーム蒸着法は、数100個から数1,000個の原子がお互いに緩く結合したクラスタを作り、クラスタの構成原子のうちの1個をイオン化して加速し、基板上に輸送して薄膜を作製する方法である。
クラスタイオンビーム堆積装置は、クラスタ発生部、イオン化部、加速蒸着部、基板から構成される。クラスタ発生部は、密閉型るつぼで構成される。密閉型るつぼ中に蒸発材料を充填し、密閉容器内の圧力が数Torrになるようにし、るつぼ先端のノズルから噴出させる。この時蒸気の一部が断熱膨張しクラスタとなる。効率よく断熱膨張させることがクラスタを形成するポイントとなる。イオン化されたクラスタを1~5kV程度で加速し基板上に輸送したとしても、クラスタが1,000個程度の原子で構成されていると、基板上に到達したクラスタの個々の原子の平均エネルギーは1~5eVとなり、基板表面上へ損傷を与えることがない特徴がある。衝突時にクラスタ構成原子間で生じる多体衝突や、固体表面上でのクラスタ構成原子のマイグレーションなどの効果によって、緻密な薄膜あるいは半導体膜のエピタキシャル成長が可能となる。
薄膜堆積方法として、X線やレーザの反射膜用金属薄膜形成などに利用されている。
現在のLSIウェハプロセスにおいて、クラスタイオンビームデポジションそのものが利用されていることはないが、クラスタイオンビームの持つ特徴である,(1)低速で大容量のイオンビーム輸送、(2)高密度照射による多体衝突効果を利用した研究が進められている。たとえば、低速クラスタイオンを利用した極薄イオン注入層形成法や、クラスタイオンを利用した高効率スパッタ現象を利用した薄膜堆積の研究が進められている。
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