半導体用語集

ストレスマイグレーション(SM)

英語表記:Stress-Migration

応力勾配による原子拡散現象を意味する。配線幅が1μm程度以下になってきた1984年に、電流を流さないただの定温放置でもAISi配線の断線が起きることが間題化した。その後の研究により、 主な原因がストレスマイグレーション (SM)であることが明らかとなった。本現象がこの時期に顕在化した理由は、絶縁膜(CVD-Si02 膜)に覆われた微細配線では絶縁膜堆積後に著しい熱応力が発生し、 それが配線断面のアスペクト比 (縦横比)が1に近づくほど大きくなったためである。また、結晶粒径と線幅が同程度となり、1個もしくは数個の結晶粒界が配線を横断する構造となったことも一因である。実際、配線に室温にて存在する残留熱応力は400~500 MPa程度になり、バルク材の弾性限界応力の3~5倍程度に達する。このような高い応力が速やかに緩和せずに維持されている要因には、Al配線が周囲ぐるりと絶縁膜により覆われているため、 応力が3軸等方的となり、釣合いに近い状態であることがあげられる。しかし、長時間においては、じわじわと応力緩和が進行して信頼性不良を起こすものと考えられる。不良部位は一般に結晶粒界に沿ったボイド形成であり、EMとは異なってヒロック形成はない。なお、応力緩和機構にはいくつかの異なる機構が影響し合っている可能性がある。すなわち、拡散クリープ、転位クリープ、および粒界すべりなどである。
SMによる断線不良部位には、特にサブミクロン幅配線において、スリット状のボイドがバンプー状粒界を横断するモードが多く観察される。EM耐性に優るバンプ構造もSMには十分でないことが示され、問題化した当時は多くの議論を呼んだ。SMへの対策として、AISi配線へ0.5~1 %程度のCuを添加することが効果的である。
Cu添加によるSM耐性向上の機構は、転位のピニング、空孔拡散の抑止などが論じられている。なお、さらなるSM耐性強化策として、AlSi配線あるいはAlSiCu配線の上部および下部に薄い高融点金属(Ti、TiN、Wなど)層を形成する、いわゆるAl積層配線が使用されることとなった。高融点金属層はAlへ加わる熱応力を低減するとともに、Al部にボイドが発生しても配線の機能を保つ役目を果たす。このように1988~89年頃より、LSIにおいてAl積層配線が主流となったのはSM対策のためである。


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