半導体用語集

フレネル回折

英語表記:Fresnel diffraction

照射X線がX線マスクの吸収体パターンエッジから吸収体バターンの下部に回り込む現象のこと。X線が波動性を有していることに起因する。回折の呼び方には2種類あり、近接露光方式のようにマスクとウェハの距離が短い場合をフレネル(Fresnel)回折といい、両者が非常に遠い場合をフランフォーファ (Fraunhofer) 回折と呼ぶ。これらは計算によりX線強度分布を求めるに際し、近似の仕方が異なることに対応している。 光の波動説を唱えたホイゲンス(Huygens)の原理に干渉の概念を導入して数式化したのがフレネル理論であり、これを単純化して計算できるようにしたのが、フレネルーキルヒホッフ(Fresnelー Kirchhoff)の回折積分式である。この積分における近似の違いが両回折の違いであり、本質的には同じ現象を意味している。フレネル回折は、近接露光方式を採用するX線リソグラフィにおける解像度の重要な決定要因である。フレネル回折のおよぶ範囲(バターンエッジからの距離)はX線波長とプロキシミティギャップの積の平方根に比例する関係にある。したがって、露光波長が長いほど、ギャップが大きいほどフレネル回折の影響は大きくなる。ただし、実際のX線リソグラフィに用いられるX線マスクは完全な遮光体ではなく、有限のコントラストを有しているので、一部のX線は吸収体パターンにおいて位相を変えながら(屈折率が1より小さいので位相は進みながら) 透過する。 これとフレネル回折を起こしたX線との相互干渉により最終的な露光コントラストは決まる。 この位相効果を逆利用 (吸収体の膜厚を最適化)すれば、解像度を上げることができる。これはハーフトーン位相シフトマスクに相当する。 位相効果の大きな低コントラストマスク (2~4) を使用することにより、サブ100nm領域の解像度を向上し、ギャップを大きくすることができる。


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