半導体用語集
光散乱法
英語表記:light scattering method
光散乱の現象を利用して半導体材料を評価する光散乱法としてよく用いられている評価法は、ラマン散乱分光法、赤外線トモグラフィ法、 OPP法などがある。ここでは前の二法について述べる。
ラマン散乱分光法は歪量の測定や結晶性の評価に有効である。ラマン散乱は物質に入射した光波(フォトン)が非弾性散乱を受けて、その際に励起された格子振動(フォノン)とエネルギーのやり取りをして、入射時とは別の振動数となって放出される現象である。いまこの格子が圧力を受けていると、フォノンのスペクトルも影響を受けるので、その振動数のシフト量から 逆に物質が受けている応力を知ることができる。応力のない場合にくらべて、振動数が負にシフトしていれば引っ張り応力、正にシフトしていれば圧縮応力を受けていることになる。応力の換算はシフト量と応力が比例するので、係数を用いて行う。
通常のラマン分光法はプロープの径が30μm程度で、えられる情報もそれらの平均値であるが、顕微ラマン分光法はプロープ径を1μm以下に絞り、試料に照射して走査する。対物レンズで集めた徴小領域からの散乱光は偏向ピームスプリッタで分離後、分光器に入れる。分光器はダブルかトリプルのモノクロメータを用いる。また徴弱光のため光電計数法(フォトンカウンティング)を用いる。
顕微ラマン散乱法ではデバイス領域の局所的な応力の測定ができる。ただし収束径がきわめて小さいため、パワー密度が非常に高くなるので注意を要する。歪のないシリコンではラマン振動数は520.3cm-1、半値幅は5.5 cmー1である。パワー密度が高くなると試料の温度が上がり、ラマン振動数は低波数側にシフトする。また半値幅は広くなる。
赤外トモグラフ法は、工ッチングでは観察されないウェハ表面近傍の無欠陥層、いわゆるZD層の微小欠陥を散乱光により検出できる。90度方向の散乱光強度は散乱体の体積、屈折率変化のそれぞれの2乗に比例する。
有用な情報をえるために入射方式に工夫がこらされている。(1)試料の劈開面からレーザ光を入射させ、微小欠陥からの90度散乱光を鏡面側から取り出して焦光し、検出する方法、(2)鏡面側からプリュースタ角で入射させ、すべて全反射する散乱光を検出する方法。この場合には劈開面を必要としない。
前二法の配置では、表面から10μmの辺りの散乱光は入射面や裏面での散乱のため区別して検出することは難しい。入射光を劈開面から斜めに入射させると、鏡面で全反射するので、表面近傍の散乱光のみを取り出すことができ、表面付近に存在する徴小欠陥からの90度散乱光を明白に劈開から検出できる。コンピュータによる画像処理系を備えた赤外トモグラフ装置が市販されている。入射光はNd: YAGレーザ、散乱光は赤外ビジコンで受光, フレームメモリによりA-D変換後、記憶される。さらに画像処理によりビデオモニタに表示される。
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