半導体用語集
分子線エピタキシー
英語表記:Molecular Beam Epitaxy : MBE
高真空中で、成長原料を分子として分子線発生セルから基板表面に供給して成長を行うエピタキシーである。真空蒸着法に似ているが、超高真空を用いていることや、高性能の分子線供給セルなどを用いており、制御性よく高純度の薄膜成長が可能になっている。
このエピタキシーは、半導体レーザなどの材料であるGaAs、AlGaAs薄膜結晶成長技術として、1970年代の初めに開始された。GaAsの分子線工ピタキシーを例にして具体的に説明する。原料であるGaとAsをるつぼに入れ加熱して蒸発させる。不純物ドーピングも同様なるつぼに不純物原料を入れて行う。この際、加熱により発生する不純物ガスの除去やセル間の独立温度制御を可能にするために、セルの周りを液体窒素のシュラウドで囲む場合が多い。またセルの噴出口にはシャッタを設置して分子線の供給を制御する。一般に分子線エピタキシーの成長速度は小さいことから、このシャッタの開閉により、膜の組成や不純物濃度をきわめて急峻に変化させることができる。GaはGa原子の形で、Asは As2またはAs4の形でセルから基板表面に供給される。成長装置は、10-11~10-12Torrの真空まで排気されるように設計されている。また成長表面の原子構造解析や成長速度の観測のためのRHEED装置や、装置内の不純物観測のための質量分析器などが設置されている場合が多い。
成長は、あらかじめAs分子線を照射しながら、基板結晶GaAsを700℃程度に加熱し表面清浄化する。その後成長温度まで基板温度を下げて、As分子線に加えてGa分子線を照射し成長を開始する。成長温度ではGaAs表面からAsの蒸発が大きいことから、結晶におけるGaとAsの組成を保っために成長は、Ga分子線にくらべて過剰なAs分子線供給の状態で行う。比較的低い温度では、供給されたGaは付着確率1で基板上に付着しGaAsが成長する。ただし640℃以上ではAsの結晶からの脱離が顕著になり、700℃以上になるとGaの脱離も無視できなくなる。
As原子をAs2の形で結晶表面に供給した場合、As2分子が結晶表面上のGa原子上で解離吸着する過程により理解されている。As2の付着係数は、Gaの供給量に比例して過剰なAs2は、結晶表面から脱離し、結晶組成のストイキオメトリは保たれる。一方、原料AsをAs4の形で表面に供給した際には、As4分子同士が表面Ga上で反応し、4個のAs原子と1個のAs4分子が生成され、前者は表面Gaと反応しGaAs結晶を成長させ、後者は表面から脱離する。
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