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半導体用語集

寿命データ解析

英語表記：life data analysis

　半導体デバイスの信頼性に関するデータは電気的特性値，抵抗値や反射率などの物性値，故障個所の座標値，物理化学的分析データ，故障寿命時間，等々と多岐にわたる。その中で信頼性に固有なものは故障寿命時間データ（以下，寿命データと略す）である。小項目では確率紙法（確率プロット法），累積ハザード紙法（累積ハザードプロット法），アレニウスプロット法といった，主なグラフィックデータ解析法を取り上げるが，ここではそれらに共通な基礎的概念の説明をするとともに，数値的なデータ解析法についても簡単に述ぺる。
　寿命データは完全データと不完全データに分けられる。不完全データはさらに，定時打ち切りデータ，定数打ち切りデータ，ランダム打ち切りデータに分けられる。図1(a)のように，サンプル数に対応した寿命データがすべてあるのが完全データである。途中で計画的に観測を打ち切られたデータとして，図1(b)のように時点を決めて打ち切られたのが定時打ち切りデータ，図1(c)のように個数を決めて打ち切られたのが定数打ち切りデータである。また，いくつかのサンプルが意図せず破壊されたなどの理由で，無計画にランダムに観測を打ち切られたものがランダム打ち切りデータである。故障原因が複数ある場合，故障原因ごとに解析することで，より正確な解析が可能となる。この時，他の故障モードあるいはメカニズムでの故障は打ち切りデータとなり，たとえ全データが揃っていたとしてもランダム打ち切りデータとして解析する必要がある。
　寿命データ解析では分布への適合性を検討し，そのパラメータの推定を行う。パラメータの推定には点推定と区間推定がある。点推定ではその推定の確からしさについては定量的には表現しないが，最も確率の高い点推定値を最尤推定値という。区間推定では推定の確からしさを確率で表現し，この確率を信頼水準という。
　グラフィック解析は，上記どのタイプの寿命データでも容易に実行できるのが特徴である。通常は分布適合性の検討とパラメータの点推定を行う。グラフィック解析法には累積分布値に基づいた確率紙法と，累積ハザード値に基づいた累積ハザード紙法がある。確率紙法では信頼区間の表示も可能である。完全データ，定時打ち切りデータおよび定数打ち切りデータの解析は，確率紙法でも累積ハザード紙法でも可能であるが，通常は確率紙法で行われる。ランダム打ち切りデータの解析は，累積ハザード紙法で行うのが正攻法であるが，確率紙法による解析も可能である。
　数値的データ解析は指数分布に従うことが事前にわかっている場合は比較的簡単な力ので．ここで説明する。それ以外のデータについては最尤法による解析が行われる。指数分布に従うことが事前にわかっている完全データや定数打ち切りデータの場合には，厳密な区間推定ができる。一般に区間推定を行うには対象となる分布の母数の関数が従う分布を利用する。指数分布の平均寿命あるいは故障率の推定には，そのような分布として図2に示すカイ2乗分布が利用できる。総動作時間(T)の2倍を平均寿命(MTTF)で割った値(2T/MTTF)が自由度2r(rは故障数）のカイ2乗分布に従うという性質を利用する。総動作時間とは，故障品の故障時間と，非故障品の打ち切り時間をすべてたし合わせた時間である。通常の統計の区間推定では，区間の両端の推定を行うことが多いが，寿命データの場合は安全サイドとなる片側の推定のみを行う場合が多い。χ²が(φ,α)を自由度φのχ²分布（カイ2乗分布）の上側lOOα％点とすると，2T/MTTF＜χ²(φ,α）である確率は1-αである，これをP(2T/MTTF＜χ²(φ,α))=1-αと表わす（図2)。半導体デバイスではMTTFには実質的意味がないため，故障率λで表現した方がよい。指数分布ではMTTF=1/λである。上式を変形してMTTFに1/λ,φに2rを代入すると，P(λ＜χ²（2r,α)/2T)=1-αとなる。平均故障率r/Tは指数分布においては最尤推定値であるので，その値に掛けるべき係数として表現すると厳密かつ実用的である。変形するとP(λ＜(χ²(2r,α)/2r)(r/T)=1-αとなり，平均故障率に掛けるべき系数はχ²(2r,α)/2rとなる。図3に故障数をパラメータにしてこの値を示した。信頼水準は1-aである。通常，信頼水準は0.6から0.9で区間推定が行われるので，その範囲で示した。
　定時打ち切りの場合には，安全サイの推定として故障数に1をたした値を故障数とみなしてこの方法を適用する。この方法を用いると故障数が0でも区間推定ができる。信頼水準60%，90％では故障が1個とみなした場合の故障率におのおの0.92と2.3を掛ければいいことが図3より読み取れる。

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