半導体用語集

故障率

英語表記:failure rate

 信頼性の指標として,半導体デバイスでは累積故障確率とともに最もよく使われる。ある時点まで動作してきたアイテムが,次の単位時間内に故障を起こす割合と定義され,通常λで表わす。時間の関数であることを意識している場合はλ(t)と記し,故障率関数ともいう。正確な定義はλ(t)= f(t)/R(t)である。λ(t)は瞬間故障率とも呼ばれる。これに対して平均故障率は(期間中の総故障数)/(期間中の総動作時間)と定義される。瞬間故障率の実データからの推定値は累積ハザード紙法に用いられる,それ以外は実データとしては平均故障率が使われる場合が多い。
 半導体デバイスはトランジスタや配線といった構成要索の直列系であることから,その信頼度は構成要素の信頼度の積で表わせる。この関係と,信頼度と故障率の関係(図1)から,故障率は構成要素の故障率の和で表わせる(図2)。
 寿命分布が指数分布の場合は故障率が一定である。また指数分布の場合は故障率λと平均故障寿命(MTTF)とは,λ=1/MTTFと,互いに逆数の関係にある。ここで注意をしておきたいのは,半導体デバイスでは故障が起きにくいため,実際に使用されている期間での故障時間の分布は,寿命分布の短時間側の裾の分布であり,分布の中央に近いMTTFは意味のある指標ではないことが多いということであ
る。簡単な例をあげる。故障率100 FITの半導体デバイスのMTTFは,計算上は,1/1×10―7=107時間≒1,140年,と出るが,この値は二つの理由で無意味な場合が多い。まず,「1,140年まで使用しない」というのが第一の理由である。二つ目の理由は「耐用寿命は1,140年もないため,そこまで指数分布には乗らない」ことである。
 グラフィックな寿命データ解析手法の代表的なものに,故障率を基本に用いてデータ解析を行う累積ハザード紙法がある。故障率は医学統計の分野ではハザードレートと呼ばれh(t)と記される。そしてh(τ)をr=0からtまで積分した累積ハザード関数H(t)(図3)は,信頼性の分野でも習慣上,名称および関数表示記号Hがそのまま用いられている。累積ハザード関数を基礎とした累積ハザード紙法は,累積故障確率を基礎とした確率紙法より汎用性に富む。すなわち、確率紙法が基本的には単一故障原因の完全データおよび定数または定時打ち切りデータに対してのみ適用可能なのに対し,累積ハザード紙法は、故障原因が多種類混在する場合にも,あるいはデータに欠損がある場合にも適用できる。詳細は「累積ハザード紙」の項を参照のこと。
 次によくみかける誤解を招きかねない用語の使い方について言及したい。「累積故障率」という言葉が,しばしば「累積故障確率」を指すものとして使われている。本来「累積故障率」という用語はあまり使われないが,これを字面どおり解釈すると,故障率を累積したものであるから「累積ハザード関数」のことを指すと解釈するのが最も素直な解釈であろう。そうすると意味がまったく異なるばかりでなく,図4に示すように値も広い範囲で異なる。累積故障確率F(t)と累積ハザード関数H(t)の間にはF(t)=1-exp(-H(t))という関係がなりたつ。誤解を招く用法は避けたい。


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