半導体用語集
サンプリング
英語表記:sampling
対象となるアイテムをすべて試験せず,その一部をランダムに抜き取り検査することを,抜き取り検査(sampling inspection),その動作または概念をサンプリングと呼ぶ。ランダムに抜き取りを行うことが重要なので,それを強調してランダムサンプリングともいう。
半導体デバイスの検査には電気的検査,信頼性検査などがある。電気的検査は自動機によるテストが可能で全数行う場合が多い。一方,信頼性の検査は破壊検査である場合が多く,またコストもかさむ場合が多いため,サンプリングで行う場合が多い。
サンプルでの試験結果を基に,対象となるアイテム全体(母集団という)の寿命分布やそのパラメータ(母数という)を推定する。母集団は,製造ロットであったり,出荷ロットであったり,あるいは開発中のプロセスのある条件で製造されるもの全体であったりする。
OC曲線の項ではロットの合否判定をするための抜き取り検査の方法について解説してある。ここでは,抜き取りで行った信頼性試験のデータを解析する方法と注意点について述べる。
寿命分布への適合性の判定やパラメータの推定を行う方法には,グラフィック解析法と数値解析法がある。グラフィック解析法を用いると分布への適合性の判定だけでなく,パラメータの推定も行える。グラフィック解析法には確率紙法と累積ハザード紙法がある。確率紙法が基本的には単一故障原因の完全データと定数打ち切りデータまたは定時打ち切りデータにしか適用できないのに対して,累積ハザード紙法は多数の故障原因がある場合にも,また,データ欠損があるランダム打ち切りデータにも適用可能である。数値解析法は主にパラメータの推定に用いられる。特に指数分布であることがわかっている場合の故障率の区間推定によく用いられる。
サンプリングではサンプル数(抜き取り数)が少ないと,誤差が大きくなる。一方,サンプル数を多くするとコストがかさむ。この両者のバランスでサンプル数を決定する必要がある。たとえば,エレクトロマイグレーション試験では,通常20程度が用いられている。サンプリングの誤差はコンピュータを使って乱数を発生させ,母数と比較することで簡単に実感できる。サンプル数(n)が20の場合にこれを示す。母集団はエレクトロマイグレーション用のTEGで試験することを想定し,対数正規分布とし,母数としてメディアン寿命(t₅₀)を1,σ を0.5とした。図1に1回の試行でえられた2個のデータを対数正規確率紙にプロットし,t₅₀とσを推定した結果を示した。図中で示した「^」は「ハット」または「山形」と呼ぴ,t₅₀ハットなどと呼び,推定値を表わすのに用いる。図1中に記したように,この試行ではt₅₀およぴσの推定値はおのおの 1.305および0.674と,ともに母数より3割以上も大きい。このような試行を20回行い,横軸に試行の回数,縦軸にt₅₀またはσの推定値を図示したものを,おのおの図2および図3に示す。母数より2割程度以上離れている試行がt₅₀では20回中10回もある。このようなサンプリングという操作に本質的に付随するバラツキを明確に意識して試験を行うことが重要である。
確率紙によるパラメータの推定に際しては,このようなバラツキを確率紙上に書き込むことで,バラツキを目でみえるようにできる。また,指数分布に従うことが明確な場合には,区間推定を行い数値で推定の確率を見積ることが簡単にできる。詳細は,「寿命データ解析」および「確率紙」の項を参照のこと。
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