半導体用語集

電気光学効果

英語表記:electro-optic effect

 媒質に光の周波数に比して十分低い周波数(直流も含む)の交流電界を加えた時,屈折率が電界によって変化する現象,または効果をいう。EO効果ともいう。媒質は結晶であることが普通である。一般に屈折率の変化は電界に平行および垂直な方向で異なる。屈折率変化が電界の大きさに比例する時,一次電気光学効果またはポッケルス効果という。反転対称性のない結晶で現われ,反転対称性のある結晶や非晶質媒質ではこの効果はない。また屈折率変化が電界の2乗に比例する時,二次電気光学効果またはカー効果という。これは反転対称性のある結晶でも現われる。いずれの効果においても,電界に対する屈折率変化の比例定数を電気光学係数または電気光学定数といい,一般にテンソルであり,一次電気光学係数は6行3列,二次電気光学係数は6行6列の行列でそれぞれ表わされる。
 電気光学効果の大きな結晶(電気光学結晶)を用いて,光偏向器(EO偏向器),光変調器(EO変調器),光スイッチ(EOスイッチ)などが作られ,広く使用されている。
 EO偏向器は,簡単にはプリズムの屈折率を電界で変化させることで可能である。また光の進む方向に垂直な面内で屈折率分布を作り,空間的位相変化を与えて光の進む方向を変化させることもできる。
 EO変調器は,印加する電解の大きさに応じて変化する屈折率により光の位相が変化することを利用したもので,原理的には位相変調器である。入射した光の偏光方向を二つの垂直な方向に分解して考えた時,電気光学効果によりそれぞれの方向の偏光に異なる位相変化を与えると,出射光の偏光方向が変化する。外部に偏光子を用意すれば偏光方向の変化に応じた強度変調がえられ,強度変調器になる。
 電気光学サンプリングは,高速で変化する電気パルスのような電気信号を電気光学結晶に印加しそれによる屈折率変化を光パルスの位相変化や偏光状態変化を測定することにより,元の電気信号を観測するものである。フェムト秒光パルスが実現してから,ピコ秒以下の電気信号の観測に用いられている。
 これらの素子に用いられる電気光学結晶としては,KH₂P0₄(KDP),NH₄H₂P0₄(ADP),LiNbO₃(LN)などが代表的なものである。
 媒質に光を入射した時,光の電界で誘起される分極が電界の2乗に依存する項を持つ時,二次の光非線形効果といい光の電界の2乗で屈折率が変化する。これは広義の二次電気光学効果とみることができ,光カー効果と呼ぶことがある。
 なお,半導体において高い電界を印加した時,バンド構造が空間的に傾く結果,トンネル効果により吸収端が長波長側にシフトする,フランツ-ケルディッシュ効果も広義には電気光学効果である。吸収端の変化は屈折率の変化をもたらしている。


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