半導体用語集

A/D変換器

英語表記:A/D converter

 アナログ信号をデジタル信号に変換する素子。変換を行う方式により大きくは6種類に分類される。積分型,逐次比較型,直並列型,パイプライン型,並列型,オーバサンプリング型である。
 A/D変換を行うと,連続量を離散的な値に置き換えるわけであるので,誤差を生じる。これを量子化雑音といい,最小分解能を⊿とした時この2乗和の平均値は,⊿²/12で表わされる。
 A/D変換器の仕様には次の表1に示すように動特性,静特性ともに様々ある。A/D変換器は内部にD/A変換器を持ち,D/A変換器からの出力と入力信号を比較して最も近いデジタル値を代表値とするものであるため,おのおのの部分に誤差があると,理想的な値とはならない。仕様を限りなく理想値に近づけると,面積の増加,消費電流の増大を招く。必要に応じて仕様を緩和することで,消費電力と面積の低減を図ることができる。
(1)ミッシングコード
 変換範囲の電圧を入力した時,すべてのコードが出ることを保証できる時, ミッシングコードはないという。微分直線性が0.5 LSB以下であれば保証できる。直線性が悪い時生じる。
(2)有効ビット数
 正弦波を入力信号としてA/D変換を行った時,えられるS/N比を理想A/D変換器で等価なビット数に換算した値。ENOB=(S/N-1.8) ÷6.02で換算する。
(3)微分利得,微分位相
 ビデオ信号特有の規格で,カラーテスト信号をA/D変換した時,カラーサブキャリア信号成分が平均出力電圧の変化により振輻が増減する割合を微分利得,位相変化を微分位相と呼ぶ。それぞれ3%,3度内にあれば,カラー信号を再生した時,画質の劣化は無視できるとされている。
(4)アパーチャ遅延
 A/D変換の基準となるクロックタイミングに対して実際に信号をサンプリングするタイミングがどれだけずれているかを数値化したもの。
(5)アパーチャジッタ
 A/D変換器が入力信号をサンプリングする時,入力クロックが厳密に周期的であっても入力信号の電圧値などによって微妙にサンプリングタイミングが変動する。この変動量の実効値を数値化したもの。入力信号の周波数をfs,分解能をNビットとした時,アパーチャジッタτはτ<1/2π2ⁿでなければ,ジッタによる雑音は量子化雑音より大きくなる。
 アナログ信号をA/D変換するには,少なくとも信号帯城輻の2倍のサンプリング周波数以上で変換を行う必要がある。サンプリング周波数の半分の周波数はナイキスト周波数と呼ばれる。ナイキスト周波数以上の周波数成分はナイキスト周波数に対して折り返された周波数の信号に変換される。この雑音は折り返し雑音と呼ばれる。これを防ぐためA/D変換を行う前に,ナイキスト周波数以上の信号はフィルタにより除去しておく必要がある。また,A/D変換を瞬時に行えない方式である場合には,A/D変換器の前にサンプルホールド回路が必要となる。そこで,A/D変換を行うには図1のように折り返し雑音除去フィルタ,サンプルホールド回路,A/D変換器の三つの機能要索が必要となる。


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