半導体用語集
故障モデル・法則
英語表記:failure model and law
ここでは故障を検討するうえで重要な考え方,モデルや法則のうちで,個々の故障メカニズムの内容に依存しない,共通性のあるものについて述ぺる。主な事項を列挙すると,
(1)直列系と並列系
(2)律速過程
(3)アレニウス則
(4)べき乗則
(5)ストレス-強度モデル
(6)マイナー則
があげられる。(1)~(4)は小項目で用語として取り上げて解説してあるので、ここでは(5)のストレス-強度モデル,(6)のマイナー則について述ぺる。
ストレス-強度モデルは対象物にかかるストレスの分布と対象物の強度の分布から対象物が破壊する確率を求めるモデルである。ストレスか強度が時間変化すれば故障に対するモデルとなる。図1ではストレスが一定で強度が時間とともに劣化する場合を示した。最初は左側のように,強度の方が安全余裕分だけストレスの分布より上に離れている。強度が劣化した後は,右側のように強度の分布とストレスの分布に重なりが出てくる。この重なった部分で,ストレスが強度を上回る可能性が出てくる。その確率は式1または式2のように表わせる。劣化後の強度分布の確率密度関数をf(x),累積分布関数をF(x),ストレスの確率密度関
数をg(x),累積分布関数をG(x)とすると,式1は次のように考えるとえられる。f(x)dxは(x-dx,x)の間に強度がある確率である。その時ストレスがxを上回る確率は{1-G(x)}であるから,f(x){1-G(x)}dxはxの強度で故障する確率になる。これを全xで積分した式1は,図1右側の分布の関係にある時に故障する確率となる。式2はストレスを主体に考えるとえられる。まず,g(x)dxは(x,x
+dx)の間にストレスがある確率である。その時強度がxを下回る確率は F(x)であるから,g(x)F(x)dxはxのストレスで故障する確率になる。これを全xで積分した式2で,図1右側の分布の関係にある時に故障する確率がえられる。
マイナー則は線形損傷累積則とも呼ばれ,「寿命食いつぶし則」とでも呼ぶと直感的に理解し易いモデルである。ストレスSiのみがNi回かかると故障する対象物に対して,Siのストレスがni回混じって加わった場合に故障する条件は「ni/Niの和が1に達した時」というモデルである。Siのストレスがni回加わることにより,寿命をni/i瓜分「食いつぶし」,食いつぶし分の合計が1に達すれば故障すると考えるわけである。
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