半導体用語集
液体封止垂直ブリッジマン法(LE-VB法)
英語表記:Liquid Encapsulated - Vertical Bridgman method
この方法は大口径の化合物半導体単結晶、特にGaAs成長のために開発された垂直ブリッジマン法の一種で、揮発成分の離散を防止する方法として液体封止剤を用いるためこの名がつけられている。現在の3~4インチ直径の工業用GaAs結晶は、液体封止チョクラルスキー法あるいは水平ブリッジマン法により製造されているが、大口径、大重量になるにつれて、液体封止チョクラルスキー法では直径制御のための高温度勾配により転位密度が増加し多結晶化が起こりやすくなり、また、液体封止剤表面から突き出た結晶の表面からのAs蒸発により特に種子結晶近傍では結晶が細くなり荷重に耐えられなくなる可能性があるという問題が浮上している。一方、水平ブリッジマン法ではこれらの問題はないが、装置、石英部材が大型化すること、D型断面形状から円形ウェハを切り出す際の損失が大きくなるといった問題がある。垂直ブリッジマン法は低温度勾配で円形の結晶がえられる成長法であるが、石英部材を用いない簡便な揮発成分の離散防止策が必要であり、また成長界面がみえないので種づけが難しく、さらに界面がるつぼと接触しているため双晶が発生しやすいといった問題がある。液体封止垂直ブリッジマン法ではこれらの問題に対して様々な工夫をしている。
この方法では、石英るつぼの代わりに図1に示したような底部に種子結晶設置用の凹みおよび肩部形成用のテーパ部を持ったpBN(熱分解法窒化ホウ素)るつぼを用い、これを同型に整形した上蓋つき炭素サセプタに収容する。上蓋には小穴が開けられており、圧力バランスを調整するとともに、Asの拡散を防止している。成長の手順は以下のとおりである。まず、るつぼ内に種子結晶、HB法などで合成したGaAs多結晶、液体封止剤であるディスク状酸化ホウ素を置き、これらを高圧(液体封止)垂直ブリッジマン炉内の上記サセプタに収容し、上蓋をする。次に、炉内を不活性ガス(Ar,窒素)で置換して数気圧に加圧し、昇温する。昇温の手順は、常に種子結晶側が低温になるようにしながら、まず、酸化ホウ素が軟化する450~600℃まで保持し、その後GaAsの融点(1,238℃)以上に加熱し原料を融解する。この時の温度分布は図1のように2段階で温度勾配をつけた3ゾーン型になっており、炭素サセプタを上下することにより原料の融解位置を変化できる。つまり、徐々にるつぽを押し上げGaAs融液と種子結晶がなじんだら、るつぼを下げることにより結晶を成長させる。温度分布の精密な制御により固液界面の位置が決定され、テーパ部の角度を調整することにより双晶の発生が抑えられると報告されている。3インチ直径までの低転位結晶の成長が可能なことが実証されており、大口径結晶成長技術としてVGF法(「タンマン法」の項参照)とともに有望視されている。

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