半導体用語集
液相エピタキシー
英語表記:Liquid Phase Epitaxy: LPE
液相エピタキシーは、原料となる原子を溶液中に飽和させ溶液温度を下げたり(冷却法)、温度差を設けたり(温度差法)、溶質の電気泳動を利用する(エレクトロエピタキシー)などして基板結晶上に析出させ、エピタキシーする方法である。最も多く用いられる冷却法による液相エピタキシーには、ネルソン法(チッピング法)、ディッピング法、スライドボート法などがある。冷却方法には、常に一定の温度で溶液温度を下げてゆく過冷却法、成長中は一定温度に保つステップクーリング法、冷却速度が熱平衡に近い状態で成長する熱平衡冷却法などがある。
冷却法の例として液相エピタキシーによるGaAsの成長を述べる。この場合には、Ga溶液中にAsを飽和させて、溶液温度を下げて成長させるのが一般的である。相図によればGa溶液中のAsの溶解度は溶液の冷却とともに小さくなる。たとえば、高い温度でAsを飽和した溶液の温度を、飽和状態になる温度まで下げGaAsの析出を行う。
GaAsの液相エピタキシーは、かつて手軽にでき、かつ高純度の結晶成長が可能であるチッピング法や、ディッピング法といった手法で行われていた。しかしながらこれらは、複雑な多層エピタキシー成長には限界があり、現在多く用いられているのは、スライディングボート法と呼ばれる手法である。
温度差法は、高温に保った溶質を溶液の一方から供給し、溶液中を溶質が濃度拡散させ、低温側に置かれた基板結晶上に析出させる方法である。このエピタキシーは均ーな厚い膜を基板上に成長させるのに適した方法である。
エレクトロエピタキシーは、溶液と 基板の間に電流を流すことにより、溶質の電気泳動により溶質を輸送し、溶液と基板界面における熱電効果による冷却により結晶を析出させるものである。この方法も溶質の供給は実際上、無限であるので厚い結晶膜の成長に適している。
液相エピタキシー法は、気相エピタキシーなどにくらべて熱平衡に近い形で成長を行うために、比較的高品位の結晶が容易に成長できるという特徴を持つ。特に素子劣化の原因となる結晶欠陥を嫌う光半導体素子の成長には、多く用いられている。しかしながら超薄膜の作製は原理上困難であり、数10nm程度の厚さの薄膜結晶が限界であるとされている。また成長した結晶表面には、一般に波状またはテラス状の液相成長特有の表面模様(morphology)が観測されるが、これは成長後の溶液除去の際の発生や、過冷却の結果としての本質的な発生によるものといわれている。
関連製品
「液相エピタキシー」に関連する製品が存在しません。キーワード検索
フリーワードやカテゴリーを指定して検索できます
関連用語
関連特集
「液相エピタキシー」に関連する特集が存在しません。
会員登録すると会員限定の特集コンテンツにもアクセスできます。