半導体用語集

有機金属気相成長

英語表記:Metal Organic Vapor Phase Epitaxy : MOVPE

 供給原料の少なくとも一部に金属ー炭素結合を有する(有機金属)化合物を用い、気相中における熱分解反応により結晶基板上に方位をそろえて結晶薄膜を形成(エピタキシャル成長)する技術。シリコンにはない高効率の発光機能や大きな電子移動度を有するⅢ-Ⅴ族、Ⅱ- VI族など化合物半導体薄膜の作製技術として主に研究開発されてきた。たとえばⅢ-Ⅴ族結晶である GaAsの成長では、Ⅲ族有機金属原料としてトリメチルガリウム(TMG) などが、Ⅴ族原料としてはアルシン (AsH3)など水素化物が一般に用いられる。Ⅴ族原料としては水素化物にくらべて毒性の低い有機ヒ素なども使用される。従来の化合物半導体エピタキシャル成長技術である液相エピタキシーや、塩化物または水素化物を用いる気相エピタキシーが、熱平衡やあるいはそれに近い状態での成長であるのに対して、有機金属気相エピタキシー (MOVPE)は熱平衡からかなりずれた条件下でも成長が可能であり、分子線エピタキシー(MBE)に近い。 MOVPEの歴史は古く、1959年にモンサント社の広範な特許の中に初めて登場するが、実際の成長は1968年 Rockwell社のH.Manasevitによるサファイア基板上へのGaAs成長が最初である。当時は原料純度が低く実用化には至らなかったが、1977年同社のR.D.DupuisとP.D.DapkusによるAlGaAs/GaAsレーザダイオードの発振によって一躍注目を浴び、研究が一気に加速された。その後、シリコン超LSI製造技術の進展にも後押しされて、高純度かつ精密なガス供給 技術が確立、MBEに匹敵する高純度な原子層レベルの超薄膜構造を、さらにMOVPEの特徴である高い生産性で作製することが可能となった。光通信や光ディスク用など各種半導体レーザがMOVPEによって量産実用化されている。また高電子移動度トランジスタ(HEMT)やヘテロバイポーラトランジスタ(HBT)など、電子デバイス作製技術としてもMOVPEは重要な地位を占めるに至っている。 MOVPEの特徴をまとめると、(1)原料をガスの形で供給するため供給量の制御が容易、(2)一般的条件下での結晶成長速度は成長温度によらず原料供給量で制御可能、(3)原料供給比の制御により混晶を含むヘテロ多層膜の成長が容易、(4)原料ガスの切り換え技術の進歩により、単原子層レベルの膜厚制御や急峻なヘテロ界面の作製が可能、(5)大面積、多数枚の基板上での高均一成長も原理的に可能で、量産性が高い、などがあげられる。

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