半導体用語集

真空紫外光電子分光法

英語表記:UPS: Ultraviolet Photoelectron Spectroscopy

 励起に真空紫外光を用いた光電子分光法である。10~100eV程度のエネルギーを持つ真空紫外光を励起源とする光電子分光法である。真空紫外光を照射すると試料原子の軌道電子が放出されるが,その運動エネルギーは基本的には入射光のエネルギーと軌道電子の結合エネルギーの差額に相当する。したがって運動エネルギーを測定することにより結合エネルギーがわかる。入射光にはしばしば希ガスの放電管,たとえばHe I,Ⅱ(21.22,40.81eV)が用いられる。入射エネルギーが小さいので,多くの場合試料原子の価電子帯の低エネルギー電子が放出される。したがって,価電子帯の電子状態・状態密度・バンド構造の解析や吸着分子の解明に適している。また,この低エネルギーの光電子の脱出深さ(固体中の平均自由行程)は0.数nmと非常に浅いので,極表面の情報のみがえられる。反面,試料表面のわずかな二次汚染にも敏感なので,十分清浄でよく定義された表面が対象となる。解析に当たってはバンドや分子軌道の理論的計算も必要になることが珍しくないので,複雑な系や試料由来の不明なものには適していない。単結晶表面やその表面の吸着分子,半導体などの価電子帯の基礎的研究に多く用いられている。
 入射光の光量を非常に大きくして感度をあげるために,シンクロトロン放射光(SR)を利用した研究も進んでいる。半導体表面物性の基礎研究に有用である。また,有機物汚染の解明にも役立つ。


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