半導体用語集
磁性半導体
英語表記:magnetic semiconductor
Siなどの典型的な半導体の電子構造は,s軌道とp軌道の混成により形成される幅の広いバンドと比較的狭い禁止帯幅,比較的小さい有効質量などにより特徴づけられる。このような特性を利用して,様々な半導体電子デバイスやその禁止帯を利用した半導体レーザを初めとする発光素子や受光素子が実用化されている。一方,金属あるいは絶縁体の磁性体は,多岐にわたって応用されているが,光学的に不透明なものが多い。これに対して母体に遷移金属原子を含む磁性半導体は,s,p軌道あるいはd軌道の作るバンドおよび禁止帯による半導体的な性質と遷移金属原子のd電子(f電子)の局在スピンに起因する磁性の両者の特性を合わせ持っている。さらに興味深いことは,半導体的なバンドの電子状態と遷移金属原子のd軌道(f軌道)が,比較的強く混成するため,電気伝導待性や光学特性などの半導体的性質と磁性が強く相関した様々な特徴的振る舞いが観測されることである。たとえば,磁気相転移点近傍で電気抵抗が,何桁にもわたって変化する現象や巨大な磁気光学効果などの興味深い性質が観測されている。
代表的な磁性半導体としては,CuCr₂S₄などのスピネル型化合物,EuSのような稀土類カルコゲナイド化合物,CuFeS₂のようなカルコパイライト型化合物,FeS₂などのパイライト型化合物などがある。磁性半導体の研究は,比較的古くから行われてたが,必ずしも十分理解が進んでおらず,また,応用に結びついたケースも少ない。これらの基礎的な研究の流れは,電子相関の大きい重い電子系の研究へと引き継がれている。
一方,1970年代後半からは,Ⅱ-Ⅵ族化合物のⅡ族サイトの一部をMnやFeなどのd電子遷移金属でランダムに置換したCdMnTeなどの希薄磁性半導体の研究が活発に行われるようになった。これらの系では,比較的強いp-dの交換相互作用のため局在スピンに起因する磁化に比例するみかけ上巨大なZeeman分裂が起こり,その結果,大きなFaraday回転が観測される。この性質を利用して,HgCdMnTeを用いた光アイソレータが,実用化されている。しかし,Ⅱ-Ⅵ族の希薄磁性半導体では,磁性イオン間の交換相互作用が,反強磁性的であるため巨大なZeeman分裂は,自発的には生じず,外部から磁場を印加することによって初めて実現される。一方,低温分子線エピタキシー法により作製されたⅢ-Ⅴ族の半導体にMnを平衡濃度よりも高濃度にドープしたGaMnAsやInMnAsでは,低温で強磁性が発現することが見い出され,注目を集めている。
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