半導体用語集
自発反応
英語表記:spontaneous reaction
中性の反応活性種 (ラジカル) との自発的な反応によるエッチングは、(A)活性種の基板表面への吸着、(B)吸着活性種の表面層への侵入とそれに続く基板原子との反応層(変性層、混合層とも呼ぶ)の形成、および(C)安定で揮発性の高い反応生成物の熱的な脱離、の三つのステップを経て進行する。詳細は反応活性種と被エッチング材料により異なるが、活性種の電気陰性度、原子半径、および基板原子との結合エネルギー、さらに基板表面温度、表面の不純物ドーピングレベル、などに大きく影響される。
ハロゲンやSi原子などの電気陰性度(相対値)は、F (4.0) >O (3.5) > N (3.0)∼Cl (3.0)>Br (2.8) >Si (1.8) である。また原子半径(Å)は、Br (1.14 ) >Cl (0.994) >F ( 0.706) >O (0.604) > N (0.549)、Si結晶における原子間距離(Å)はSi-Si (2.35)である。さらに原子同士の結合エネルギー (eV)は、被エッチング材料についてSi-Si (2.3)、Si-O (4.8)、反応性ガス(エッチングガス)についてF-F (1.65)、Cl-Cl (2.51)、Br-Br(2.00)、O-O (5.17)、C-F (5.72)、反応生成物についてSi-F (5.73)、Si-Cl (4.21)、Si-Br(3.81)、C-O(11.16)などである。F原子は電気陰性度が高く、原子半径も小さく、Si表面に吸着するとSi結晶格子から電子を引き抜き負イオンF⁻を形成する。その結果、誘起される電界により、F-イオンは結晶格子内部に比較的容易に侵入し、正に荷電したSiと反応して強いイオン性結合Si-Fを作る、と考えられている。これはMott-Cabreraによる固体の酸化理論 (電界支援モデル) と類似した機構であり、フッ素による Siのエッチングでは、比較的厚い表面反応層が形成されエッチング速度も速い。
反応活性種の基板表面への吸着は、多くの場合、化学吸着プロセスであり、吸着確率は活性種の表面被覆率 (カバレッジ) の増加とともに減少す る。 フッ素/Si系では、F₂分子とF原子はともに∼0.5程度の初期確率で清浄Si表面に吸着するが、Fで飽和したSi表面 (定常状態)でのF₂の吸着確率10⁻⁵∼10⁻⁶、Fは10⁻²程度である。F原子の場合、最表面下~数原子層に及ぶ反応層(SiFₓ層)が形成され、SiF₄, Si₂F⁶、Si₃F₈などの揮発性の反応生成物分子が脱離して(室温では主にSiF₄)エッチングが進行する。なお高温( > 数100℃ )での主な脱離種はSiF₂になる。また塩素/Si 系では、Cl₂分子は清浄Si表面に初期確率∼ 0.5で解離吸着し、∼1原子層程度の吸着/反応層(SiClₓ層)を形成する。飽和条件下での吸着確率はゼロとなり、室温ではエッチング反応は起らないが、温度を上げると( >数 100℃ )エッチングされる。一方Cl原子は、比較的容易にSi結晶内部に侵入して~数原子層の反応層を形成し、室温でもエッチングが進行する。Cl 原子のSi表面への吸着確率は、飽和条件下でも10⁻4∼10⁻⁵ 程度にとどまる。脱離する反応生成物分子は、SiCl₂および揮発性のSiCl₄、Si₂Cl₆などで、主にSiCl₂とSiCl₄である。
表面分析によると、反応層の最表面近傍にはSiF₃やSiCl₃が、より深い層には低次のSiFやSiClが多く分布しており、フッ素/Si系ではわずかながらSiF₄も観測されている。結局、SiF₃、SiCl₃が主要な化学結合状態であり、それぞれF、Clと最終的に結合してSiF₄、SiCl₄などの反応生成物分子を形成する過程がエッチング反応を律速していると考えられる。
SiO₂はF原子と自発的に反応しエッチングされるが、強いイオン性結合 Si-Oのためエッチング速度は小さく、室温ではSiの1/100程度である。フルオロカーボンプラズマによるSiO₂エ ッチングではF原子は異方性と選択性を損なうため、同時にH₂を添加してF原子を結合の強いHFとして除去する。 この除去効果により CFₓラジカルの再結合も抑制され、密度が増加して重合膜堆積が起こりやすくなる。またAlは、表面の酸化被膜 Al₂O₃を物理的スパッタリングやBCl₃の還元作用などで除去すれば、Cl₂分子、Cl原子とも自発的に反応し、室温ではAl₂Cl₆また高温( >200℃ )ではAICl₃が揮発性の反応生成物として脱離する。なおフッ素/Al系では、AIF₃が揮発性でなく自発反応は生じない。
多くのプラズマエッチングでは、上記のH₂、BCl₃やAr、O₂など種々の添加ガスを加えた混合ガスを用いる。添加ガスの効果は、反応活性種の密度制御、重合膜堆積種の密度制御、自然酸化被膜の除去の他、放電の安定化、表面の酸化など多様である。
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