半導体用語集

衛星通信システム

英語表記:satellite communication system

 衛星通信システムは地上主局系、衛星に搭載される中継系およぴ地上のユーザー端末系から構成される。地上系やユーザー端末系は送信部と受信部で構成され、送信部では情報をQPSK、QAMなどの信号にする変調器、この信号を含む中間周波数や高周波信号にアップコンバートするミキサと局部発振器、高周波信号を電波として送出するための高出力増幅器からなる。局部発振器はPLO(Phase Lock Oscillator)や周波数逓倍器(Frequency Multiplier)から構成される。
受信部には衛星から到来するきわめて微小な電波を低雑音で増幅する低雑音増幅器(LNA : Low Noise Amplifier)、増幅された高周波信号を中間周波数にダウンコンバートするミキサと局部発振器、情報を取り出す復調器から構成される。
 衛星系の中継器は一般に情報を取り出すことをせず、衛星から到来した電波を受信し高周波のまま周波数を変換するのみで送信する。このため高周波系の受信増幅器と周波数変換のためのミキサと局部発振器、高出力増幅器から構成される。
 地上主局系は天候や降雨でも十分な信号対雑音比をえるため数10Wから数100Wの高出力がえられるTWTが使われる。中継器はLNAの受信部では半導体で構成され、高出力増幅部はミリ波など高い周波数ではTWTが用いられるが、L帯やS帯ではSSPA(Solid State Power Amplifier ; 固体増幅器)の半導体が用いられつつある。
 端末系における基本となる半導体コンポーネントは低雑音増幅器および電力増幅器であるが衛星通信システムにおいてはGaAs FET(Field Effect Transistor ; 電界効果型トランジスタ)およびHEMT(High Electron Mobility Transistor ; 高電子移動度トランジスタ)が用いられる。HEMTはAlGaAs/GaAsヘテロ接合界面をチャネルとしている。現在最も多く用いられている歪格子型HEMT(Pseudomorphic HEMT)は、AlGaAs層とGaAs層との間にあるInGaAs層がチャネル層を形成している。さらに格子整合型HEMT(Lattice-matched HEMT)は、動作周波数、雑音特性が優れているが実用化に至っていない。市販のHEMTは周波数10GHz以下では雑音指数(NF : Noise Figure)が0.5dB以下であり、20GHz付近では1dB以下が実現されている。衛星による高速データシステムの多くはKu帯(14/12GHz)、Ka帯(30/20GHz)であり、そのほとんどに前述のHEMT系が使われる。
 高出力増幅器としてはGaAs MES­FET(Metal Semiconductor FET)、HEMT、HBT(Heterojunction Bipolar Transistor)が使われる。20GHz以下の周波数ではGaAs MESFETが多く、30GHz以上ではHEMTの利用が多い。L帯やS帯では数10Wの出力がえられる、30GHzで2W程度の出力である。
 衛星システムにとっては重要な高周波アナログデバイスの他に、デジタル音声、デジタル高速データ回線にはデジタル変復調回路に用いられる半導体が必要であるが、無線通信に共通なデバイスであり他項を参照されたい。

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