半導体用語集

走行時間

英語表記:transit time

 トランジスタの信号遅延時間のうちキャリアの走行に伴う遅延時間。バイポーラトランジスタにおけるベース走行時間や、電界効果型トランジスタにおけるゲートチャネル走行時間など、キャリアが中性半導体領域を通過する際の信号遅延時間は、キャリアの通過時間そのものとして定義できる。一方、バイポーラトランジスタにおけるコレクタ走行時間など、キャリアが空乏層を通過する際の信号遅延時間は、空乏層の外部回路を流れる誘導電流の位相遅延分として定義され、空乏層内でのキャリアの速度分布が空間的に一様な場合、キャリアの通過時間の1/2となる。
 キャリアによる走行時間と寄生素子による空乏層充電時間の和の逆数は、トランジスタの動作速度に関する性能指標の一つである電流利得カットオフ周波数に等しくなる。 トランジスタの高速化には寄生抵抗および寄生容量の低減とともに、走行時間の短縮が不可欠であり、バイポーラトランジスタにおけるベースの薄層化や電界効果型トランジスタにおけるゲート長の短縮などがそのための手法としてあげられる。また、GaAsなどの化合物系ヘテロ接合バイポーラトランジスタでは、コレクタ空乏層内での電子速度オーバシュート効果(電界による加速を受けた電子の速度が過渡的に定常値を上回る現象)を利用することにより、コレクタ走行時間の短縮を実現している例もある。

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