半導体用語集

電子干渉効果

英語表記:electron interference effect

 電子の波長と同程度かより小さい構造においては、電子の波動性が重要になり強い干渉効果が現われる。SiO₂/Si、AlGaAs/GaAs界面や量子井戸中に形成されるサブバンドも層に垂直方向への電子の定在波の形成、いい換えれば層に垂直方向の電子干渉に基づくものである。垂直方向には原子オーダの精密制御が可能なため、これらの効果は室温でも十分に観測される。層に水平方向の構造に関しても量子ドット構造(「量子ドット」、「低次元構造」の項参照)への電子波の閉じ込めによる零次元準位の形成などが実現されている。電子干渉効果は構造寸法が電子の波長オーダより大きくても電子の位相緩和長より小さい構造においては現われる。この典型が微小リングを周回する電子の干渉によるAB振動(「AB効果」の項参照)である。電子は周回チャネルが囲む磁束に比例した位相変化を受けるため、微小リングの抵抗は磁場の関数として周期的に振動する。メゾスコピック構造における電子干渉効果のもう一つの例としてコンダクタンス(抵抗)のゆらぎがある。これは様々な軌道間の干渉が磁場の関数として変化するため、細線構造において各細線に独特なしかし再現性のあるゆらぎが現われるもので、各細線の散乱体の配置を反映したものといえる。また、電子干渉は広い二次元電子ガス(2DEG)の伝導特性にも影響を与える。多くの二次元電子系では零磁場近傍で磁場を増大するにつれ、抵抗が減少する負の磁気抵抗がみられる。ある点を出発した電子の軌道が散乱を繰り返し元の点に戻る軌道を形成する時、零磁場では左回りと右回りの位相がどのような軌道に対しても必ず等しくなり、干渉効果で局在が促進される方向(アンダーソン局在)に働く。これに対し、磁場を加えると右固りと左回りの二つの軌道に軌道が囲む面積に入る磁束に対応した位相差が生じ、局在を弱める方向に働くことから抵抗が減少することが説明される。

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