半導体用語集

静電ダメージ

英語表記:electrostatic damage

静電ダメージはチャージアップダメ ージあるいはチャージングダメージとも呼ばれる。プラズマエッチングに際して、ゲート電極への電荷蓄積(チャージアップ、チャージング)が原因となり電極と基板との間に電位差が発生し、ゲート絶縁膜が劣化する現象である。電位差が大きく電界強度が数 MV/cm程度以上になるとゲート絶縁膜を電流(Fowler-Nordheimトンネル電流)が流れ、電流誘起ストレスを引き起こし、絶縁膜中での電荷捕獲や絶縁膜/ Si基板界面における準位の形成などにより絶縁膜の劣化に至る。その結果、 MOSトランジスタのしきい値電圧やサプスレッショールド係数のシフト,ホットキャリア寿命劣化、ゲート絶縁膜リーク、さらにはゲート絶縁膜破壊が生しる。このようなチャージングダメージは、ゲート電極エッチングやゲート電極と繋がるメタル配線のエッチングにおいて、デバイスの高集積化/微細化とゲート絶縁膜の薄膜化に伴い顕著になってきた問題であり、高フラックスの荷電粒子(イオンや電子)が表面に入射する低圧力・高密度プラズマで生じやすい。
チャージングには、巨視的なものと徴視的なものがある。前者はプラズマのウェハスケールでの不均一性に起因するチャージング、およびプラズマの on・off時などに生じる過渡的なチャージングであり、後者は基板表面のパターン構造に起因するチャージングである。プラズマの不均一性にかかわるチャージングは、基板ステージに高周波(バイアスが印加される場合 (rf励起プラズマを含む)に問題となるが、プラズマの均一化により対処できる。プラズマが均一で1rfサイクルの間、プラズマから被エッチング電極表面に流入するイオン電流と電子電流がウェハ面内の各点で局所的にバランスするならば、表面で反対符号の電荷同士が余剰電荷を残さぬように再結合し、正味のチャージングは生じない。しかし、プラズマ密度やプラズマ電位が不均一で、イオン電流と電子電流が1rfサイクルを通して局所的にバランスしていないとチャージングが生じる。この場合、導電性の電極が繋がっている間は、イオン電流と電子電流のアンバランスを相殺するように電極内を電流が流れチャージングは生じないが、各電極パターンが孤立するエッチング終点付近でチャージングが生じる。なお過渡的なチャージングは、基板表面上のシースの形成/消滅の時間変化に関わるものであり、プラズマのon・off時におけるプラズマ励起パワーやrfバイアスパワーの上昇/下降速度の制御が必要である。
基板表面のパターン構造に起因する局所的なチャージングは、導電性の電極上に高アスペクト比構造の絶縁物パターンが存在する時に顕著に生じる。これは、プラズマから被エッチング電極表面への電子の流入が不足して生じるもので、その機構は電子シェーディングと呼ばれる。形状異常におけるノッチングと同様、入射するイオンと電子の運動の違いが根本原因である。イオンは基板表面上のシースにおいて表面に垂直方向に加速され、パターン底部まで入射可能であるが、電子は減速され、その熱運動による大きな横方向の速度分布の広がりのため、アスペクト比の大きなパターンになるほど入射しにくい。その結果、フォトレジストなど絶縁性のマスク側壁は負にチャージアップする一方、パターン底部の被エッチング電極表面にはイオンが過剰に流入する。この場合、導電性の電極が繋がっている間は、過剰イオン電の影響を相殺するように造極内を電流が流れチャージングは生じない。しかしニッチング終点付近になり、マイクロローディング効果によって狭いパターン間の電極はまだ工ッチングされすに残り(RIEラグ)孤立すると、局所的にこの部分がアンテナとして働き,残った電極の部分は過剰イオン電流により正にチャージアップする。電子シェーディングの程度はパターンのアスペクト比の増加とともに増大し、またプラズマ電子温度と正の相関があ電子シェーディング対策として、 電子温度の制御、およびパターン内への電子や負イオンなど負電荷の注入が研究されている。具体的には、プラズマのパルス変調、パルス変調に同期しての基板ステージへのrfバイアス印加、低周波バイアス印加、パルスバイアス印加、などの方法が提案され、電子シェーディングやチャージングダメージの低減効果が示されている。


関連製品

「静電ダメージ」に関連する製品が存在しません。

関連用語

関連特集

「静電ダメージ」に関連する特集が存在しません。




会員登録すると会員限定の特集コンテンツにもアクセスできます。