半導体用語集
非放射再結合
英語表記:nonradiative recombination
放射再結合に対して,外部への光の放射のない再結合過程をいう。非発光再結合,非輻射再結合ともいう。再結合によって余分になったエネルギーは格子振動(フォノン)を励起し,熱となって失われる場合と,このエネルギーが他の電子を励起するのに使われ,発光を伴わない再結合過程であるオージェ過程とがある。特にバンドギャップの小さな半導体を用いた発光素子ではオージェ過程が問題となる。
オージェ過程,またはオージェ効果とは,高いエネルギー状態から低いエネルギー状態へ遷移した時,その差のエネルギーが他の電子を励起するの使われ格子振動としてエネルギーが消費され,最終的に外部には発光しない過程である。励起される電子は伝導帯にあることも,価電子帯の深い準位にあり価電子帯の上端近くへ遷移すると(この場合は正孔が励起されたと考えることもできる)もある。
結晶欠陥や不純物はバンドギャップの中に準位を作る。このような準位を介して電子や正孔が捕獲され,発光を伴うことなく再結合を促進することがある。これらを非発光再結合中心と呼んでいる。また,表面での付着不純物や結晶の乱れなどによる表面準位も同様な非発光再結合中心となる。発光ダイオードや半導体レーザなどの発光素子において,非発光再結合は発光効率を低下させる原因となるため,非発光再結合中心となる結晶欠陥や不要な不純物の低減に極力つとめることになる。
GaAs/AlGaAsを用いた半導体レーザの初期の頃には,その素子寿命が結晶欠陥で決まっていた。半導体レーザのしきい値電流は動作時間とともに増加し,ある時点で発振が停止する現象があり,これは結晶の中に欠陥が形成されそれが成長することによって非発光再結合の領域を広げるためであることがわかった。このため,結晶成長技術の高度化を進めより高品質の結晶を実現することや,素子構造の工夫による動作電流の低減などが図られ,現在は十分な素子寿命が実現している。
InP/InGaAsPを用いた半導体レーザでは,バンドギャップエネルギーが1evより低くなるため,オージェ効果が非放射再結合として重要になる。しかし,素子の構造の工夫や,量子井戸構造の採用などにより,より高効率の半導体レーザ構造とすることで,非放射再結合による発光効率の低下を無視できるほどに性能が高められている。
一方,非放射再結合を利用して,結晶の品質を評価する手段も考えられている。カソードルミネセンス法はそのつで,電子線で励起してルミネセンスの波長および強度分布を観測する手法である。欠陥や不純物による非放射再結合中心の部分からの発光はないから,結晶の面内分布をトポグラフとして観測し,結晶の品質の面内分布を評価することができる。
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