半導体用語集

AB効果

英語表記:Aharanov-Bohm(AB) effect

 光線の干渉と同じように、電子の流れを二つに分けて再び合流させた場合に、∫BdS(電子のパスが囲む面積に入る磁束)に比例した位相差が二つのパスの電子に生じる現象をいい、この現象を最初に理論的に予想した科学者 (AharanovとBohm)にちなみAB効果という。この効果の不思議なところはパスが囲む領域に磁束が存在すれば、実際に電子が通過するところには磁場がなくても生じるところにあり、電子線ホログラフィ技術を用いて1986年に外村らにより実験的に実証された。その後、微細加工技術の進歩に伴い、金属や半導体で電子の可干渉長より小さい徴細構造が作成できるようになり、特に微細ループ構造において、ループを貫く磁場の関数として明瞭な抵抗値の振動が観測された。これはループを貫く磁束の変化により、ループを伝導してきた電子が互いに強め合い電流を増加させる方向で干渉する場合と、逆に弱め合う方向で干渉する場合が、位相差の変化に合わせ周期的に現われることで説明される。この AB効果の固体中での実証は、メゾスコピック系の研究の出発点となった。徴細ループ構造の実験では、電子が実際に走行する様々なパスが囲む面積のばらつきが小さいことが重要であり、ループの内径と外径の差が小さいことが大切である。電子が二つのパスに分かれるのではなく、一箇所から出た電子が同じパスを通過して再び同じ場所に戻ってくる場合にも同様の原理により磁場中では右回りと、左回りの位相差が生じる。この場合は振動の周期が AB効果の半分になり、AAS(Alt­shuler-Aronov-Spivak)効果と呼ばれている。この固体中の電子の干渉効果は、低磁場で観測される負の磁気抵抗効果(「磁気抵抗効果」の項参照)を説明するのに重要である。

関連製品

「AB効果」に関連する製品が存在しません。

関連用語

関連特集

「AB効果」に関連する特集が存在しません。




会員登録すると会員限定の特集コンテンツにもアクセスできます。