半導体用語集
Ⅳ族半導体
英語表記:group Ⅳ semiconductors
元素周期表のⅣ族に属する炭素(C),ケイ素(Si),ゲルマニウム(Ge),スズ(Sn),鉛(Pb)のうち,ダイヤモンド構造をとる炭素(ダイヤモンド),ケイ素(シリコン),ゲルマニウムは半導体となり,Ⅳ族半導体と呼ばれている。
Ⅳ族原子はs²p²配置の4個の外殻電子を有し,固体を作る時は,この外殻電子を互いに共有することで混成軌道を形成し凝集力をえている。ダイヤモンド構造においては,Ⅳ族原子は他の4個のⅣ族原子の四面体で取り囲まれており,109°の結合角を持っている。バンドギャップは,ダイヤモンドが5.6eV,ケイ素が1.1eV,ゲルマニウムが0.7eVであり,いずれも間接遷移型である。
特に,シリコンは,エレクトロニクス用のトランジスタやダイオードの材料として,またコンピュータ用のCPUをはじめROM,RAMなど集積回路の材料として,現在のデジタル社会を下から支えており現代の「産業の米」とまでいわれている。さらには,太陽電池材料としてクリーンエネルギーの主流としても期待されている。最近では,多孔質シリコンなど微細化による量子サイズ効果を利用した発光デバイス材料としても研究が進んでいる。シリコンの単結晶は,主としてCZ法(Czochralski法)と呼ばれる融液からの引き上げ法により作製され,直径最大300mmに及ぶ大口径の単結晶がえられている。単結晶の品質はきわめて高く,不純物濃度は0.1ppb以下,転位密度は0となっている。
ゲルマニウムは,シリコンと同様の性質を示し,半導体開発の初期にはデバイス材料として用いられたが,バンドギャップが小さいため電気伝導は熱の影響を受けやすいが,移動度が電子,正孔ともシリコンより高いので,高移動度を必要とする電子デバイス材料として利用される。またバンドギャップが小さいので,高感度の近赤外線検出器材料として利用される。
ダイヤモンドは,バンドギャップが大きく熱伝導率が高く硬度が高いので,耐環境電子材料として期侍されている。バンドギャップが大きいため絶縁性であるが,移動度は電子・正孔とも2,000cm²V⁻¹s⁻¹という大きな値を持つ。青色発光材料としても研究されている。
スズは金属と半導体の境界にある元素である。13.2℃を境にそれ以上ではβ-Snと呼ばれ体心正方構造を持つ金属であるが,13.2℃以下ではα-Snまたは灰色スズ(gray tin)と呼ばれ,ダイヤモンド構造を取り半金属となる。
この他,Ⅳ族系材料として,炭素とケイ素の化合物である炭化ケイ素SiC,ケイ素とゲルマニウムの固溶体Si₁₋xGexが注目される。SiCは四面体配位であるが,元素の積み重ね方の違いにより六方最密構造と立方最密構造がある。六方最密構造には繰り返しの異なる100種類以上の多形(polytypism)を持つ。立方晶はβ-SiCのみである。本質的に共有結合であるが,電気陰性度の違いによりイオン性が生しる。六方晶のバンドギャップは立方晶のバンドギャップ2.2eVにくらべ1eV近く高い。ドーピングが可能なので,pn接合を形成でき,トランジスタが作製されている。バンドギャップが大きいので耐環境デバイス材料として期待されている。
シリコンとゲルマニウムは全率固溶することが知られている。へテロバイポーラトランジスタ(HBT)のナローギャップベース材料として注目されている。Si₁₋xGexバルク固溶体の伝導帯の底はx<0.85ではΔ軸上にあるが,これ以上ではΛ軸に移る。薄膜の場合は,格子定数の違いによる歪の存在のためバンドギャップは無歪固溶体に比し低い。
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