半導体用語集
はんだディップ
英語表記:solder dipping
はんだディップは半導体パッケージのリードの外装処理方法の一つである。リードにフラックスをつけ,溶融したはんだに浸漬することにより,はんだ被膜をつける方法である。リードがリードフレームに繋がった状態でなければ加工できないはんだめっきと異なり,リード先端がばらばらの状態でも加工できるので,一般的にトリムアンドフォーム工程の後で行われる。
はんだめっきと比較すると膜厚の差が大きく,厚いところには数lOµmつくのに対し,コーナ部は1µm以下となる。これは表面張力と重力の影響によるものである。まためっきが0.5mm以下のファインピッチのリードでも対応できるのに対し,はんだディップはリードピッチ1mm以下ではリード間ではんだが繋がる(ブリッジする)ため,対応できない。しかし,多くの工程を持ち大型の装置を必要とするめっきに比較すると,ディップの工程は単純で,装置も小型で安価である。また,ランニングコストの面でも,高い薬液を用いるめっきに比較するとはるかに安く有利である。
はんだディップに用いられるはんだは,スズ-鉛の共晶はんだ(スズ63wt%,鉛37wt%,融点183℃)である。しかし,実際にはフレームの素材がはんだ槽に溶出するため,生産数が増えて行くにつれ,様々な不純物を含んだはんだになっていることが多い。一般的に,はんだディップ被膜は,はんだめっき被膜より濡れ性が悪いといわれているが,この不純物が濡れ性を低下させている一つの原因といえる。特に銅素材のリードの場合は銀の溶出が大きいため,注意が必要である。
はんだディップ法の工程は下記のとおりである。
(前処理→水洗→)フラックスコート→はんだディップ→フラックス洗浄(水洗,有機溶剤洗浄)→乾燥
前処理は,化研液を使ってリード表面の酸化膜を除去する工程である。リードの酸化の程度に応じて入れる必要がある。次にリードをフラックスに浸漬する。フラックスは,リードとディップはんだの表面の酸化膜を取り除き清浄にするだけでなく,はんだの表面張力を低下させ濡れ広がらせる効力がある。はんだディップは,溶融したはんだ槽の中にリードを浸漬し,はんだ被膜をつける工程である。フラックス洗浄は,パッケージ表面に残ったフラックスを洗浄除去するものである。ロジン系フラックスの場合は有機溶剤で,水溶性フラックスの場合は,水や湯で洗浄する。特にハロゲン(塩素)が0.2wt%以上添加されたフラックスは,残留すると腐食の原因となることがあるため,十分に洗浄する必要がある。
はんだディップの方式は,リードを静止したはんだ槽の中に浸ける静止式はんだディップと,はんだを噴流にして噴水のように噴き上げた中を通す噴流式はんだディップがある。静止式はんだディップは,はんだ槽の表面に酸化膜が張るため,ワイパで表面の酸化膜を掻いた直後にリードを浸漬する。装置が簡単でコストが安い。噴流式はんだディップは,常にはんだが流動しているため,ワイパが必要なく,連続で流しながらの作業が可能である。また,リードに対する伝熱効率がよいためディップ品賀が高い。しかし,はんだ槽内にドロス状の酸化物が多く発生するためメンテナンスは十分に行う必要がある。
はんだディップの評価項目は,濡れ性(メニスコ試験,はんだなじみ試験),耐熱・密着試験,ディップ厚(断面研削),残留イオン濃度チェック(オメガメータ)がある。また,外観検査の不良項目は,はんだはじき,シミ,くもり,ブリッジ,こぶ(はんだ溜まり),フラックス残りがある。
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