半導体用語集
イオン化不純物散乱
英語表記:ionized impurity scattering
結晶中に存在するイオン化した不純物のクーロンポテンシャルにより電子が散乱されることを意味し,低温領域で最も支配的な弾性散乱機構の一つである。一般に,三次元電子系に対して,クーロンポテンシャルは距離rに反比例するポテンシャル形状を有しているが,伝導電子が存在する状況では,伝導電子による遮蔽効果により,遮蔽されたクーロンポテンシャルは以下となる(下記式参照)。
ここで,Qはイオン化不純物の電荷,eは電荷素量,x₀は低周波の比誘電率,ε₀は真空の誘電率である。1/k₀は遮蔽長と呼ばれる距離で,k₀²はフェルミ面における電子の状態密度にe²/x₀ε₀をかけた量である。伝導電子による遮蔽効果のため,イオンから離れるに従ってクーロンポテンシャルは急激に減衰する。
イオン化不純物散乱の行列要素は,1/q²(qはクーロンポテンシャルをフーリエ変換した時の波数)という波数依存性を持っているため,波数成分の大きな高速の電子に対する散乱強度が減少するのが特徴である。このことを反映して,温度が高くなり熱電子のエネルギーが大きくなるほど,イオン化不純物散乱で制限される移動度は増大する。
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