半導体用語集

フォノン散乱

英語表記:phonon scattering

 フォノンには隣接する原子が同位相で振動する音響フォノンと、隣接する原子が逆位相で振動する光学フォノンがある。音響フォノンはピエゾ電気効果(音響フォノンによる結晶格子の変位による局所的なピエゾ効果)および変形ポテンシャル効果(音響フォノンによる結晶格子の変位による局所的なバンド構造の変調)を通してキャリアの散乱に寄与するが、音響フォノンのエネルギーは、キャリアのエネルギーにくらべ小さいので散乱は弾性的になる。散乱の強さは散乱確率とフォノン密度の積になり、音響フォノンによる散乱の大きさはTE^1/2(T:温度、E:キャリアのエネルギー)にほぼ比例し、キャリアが縮退していれば移動度µはT⁻¹に比例し、縮退していなければT^-1.5 に比例することになる。一方、GaAsのように結晶がイオン性を持つ場合には、光学フォノンによる分極電場により有極性光学フォノン散乱が生じる。光学フォノンのエネルギーはほとんどの半導体で150~500Kに相当し、キャリアエネルギーに近い値を持つので散乱は非弾性的になる。フォノンの密度は1/(e^nw/kT -1)で与えられるが、光学フォノンのエネルギーは室温300Kに近いため、室温付近で密度変化に対応した強い温度依存性が観測される。化合物半導体の室温付近では、この有極性光学フォノン散乱が最も重要であり、たとえばAl­GaAs/GaAsヘテロ界面の二次元電子ガス(2DEG)の場合には、70K以上では移動度は有極性光学フォノン散乱により支配され、10~70Kでは音響フォノン散乱の寄与が強くなり、4K以下の低温ではフォノン散乱の影響は無視できる。

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